不知火類の貯蔵管理について

はじめに

近年、不知火類は貯蔵中の腐敗果やこはん症の発生が多く、せっかく収穫したのに出荷につながらないことが問題となっています。秋期の高温乾燥や収穫時の多雨などにより、果皮体質が弱くなっていることが、貯蔵管理を難しくしている一因と考えられます。今年は秋期の気温の日較差が大きく着色が早くなっているため、果皮の老化が早まることが予想されますので、より一層、果実の状態を注視しながら、貯蔵を行う必要があります。
今回、貯蔵管理のポイントについてご紹介しますので、毎年腐敗果が多い方は、我が家の貯蔵庫の点検とこれまでの貯蔵方法を振り返り、どこに問題があるか、今一度の確認をお願いします。

貯蔵庫の点検

①温度計・湿度計を設置し、感覚だけに頼らず、数字を見ながらより適切な管理を行いましょう。
②貯蔵庫の特性によって貯蔵期間を変えましょう。
◯コンクリート床やスレート屋根など:外気の影響を受けて温度変化・乾燥しやすいので、主に1ヶ月程度の短期貯蔵に用います。
◯土間、土壁、瓦屋根など:外気の影響を受けにくいので、長期貯蔵に適します。

貯蔵管理のポイント

収穫時の天候に応じた予措と貯蔵果実の点検を確実に行いましょう。

【予措】
予措を行うことで、果皮の水分が減少し、果皮表面からの蒸散が抑制され、貯蔵性が高まり、果実の品質低下を防ぐことができます。
予措はコンテナ重量の減量歩合を目安にして、下記の手順で行います。
①収穫直後に2~3コンテナ選び、 コンテナごと重さをはかります。
②収穫時の天気や果実の状態に応じて、予措(減量)の程度を決めます。収穫時に晴れて乾燥ぎみのときは減量歩合を3%にし、収穫直前に雨が続き湿気ぎみのときは減量歩合を5%にしましょう(図1)。

図1 予措程度の決め方
※熊本県果樹生産振興対策本部より提供

③4~5段程度積んだコンテナは、風通しを確保できるよう間隔を空けて置き、均等に予措をかけていきます(図2)。予措の程度の確認は、最初に選んだコンテナの重さを定期的に測定して確認します。2~3週間かけて目標の重さになるように予措します。急激な予措はこはん症(写真1)を助長しますので、避けましょう。また、予措期間中に1回は、腐敗が無いかチェックしましょう。
④目標の重さに達したら、予措が完了です。
予措後、ポリやPプラスで個装し貯蔵に移りますが、収穫時にすでに果実にこはん症が発生している場合は、軽めの予措にしましょう。また、予措期間中にこはん症が発生した場合は、直ちに個装し貯蔵に移る必要があるため、予措中の果実の状態もしっかり観察してください。

写真1 こはん症
図2 予措時のコンテナ配置
※アグリくまもと「技術と方法」2022年1月20日掲載記事より引用

【貯蔵のポイント】
①コンテナに入れる果実の量は、8分目までにしましょう。
②貯蔵中は果皮を乾燥させないことが重要であるため、ポリやPプラスで個装します。個装することで共腐れも防止できます。個装ができない場合は、コンテナ内側に新聞紙やタイベックを敷いて、覆うのも効果的です(写真2)。
③貯蔵庫内にコンテナを詰め過ぎにないようにしましょう。1坪に1tを基準にし、貯蔵スペースを確保することで、換気を良くするとともに、点検もしやすくしておきます。
④貯蔵条件は、庫内温度5~10℃、湿度85~90%が最適です。温湿度管理は、庫内温度の急激な変化により結露が生じると果実腐敗を助長するため、温度変化が最小限になるように注意してください。また湿度計を確認し、湿度が高いときは、外気温と庫内の温度差が少ない朝方などに換気を行いましょう。湿度が低いときは、打ち水やバケツに水を張るなどして加湿を行います。
⑤貯蔵中は2週間に1度は庫内を確認し、腐敗やこはん症をチェックしましょう。腐敗果がある場合は、直ちに除去してください。

写真2 果実貯蔵の様子(左:個装、右:新聞紙被覆)

さいごに

1年かけてせん定、施肥、防除等の管理を行い、ようやく収穫を迎えたのに、腐敗が多いと収穫までの努力が報われません。“おいしい果実”を待っている全国のお客様のためにも、貯蔵管理をしっかり行い、出荷につなげましょう。

県央広域本部 宇城地域振興局 農業普及・振興課

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