温州みかんの品質向上対策

はじめに

本年産の温州ミカンの着果量は園地や樹種でバラツキはあるものの極早生は中~やや多、早生はやや少~中、普通はやや少ない傾向にあります。
着果量が少ない場合は、果実肥大が旺盛となり、糖度が上がりにくいことが予想されますので、適正な摘果やシートマルチ、フィガロン散布を確実に実施し、高品質果実生産に努めましょう。

摘果の実施

まず、着果が多い樹のみを優先的に、裾なり、内成を中心に粗摘果を実施し、少ない樹は8月下旬の仕上げ摘果で調整しましょう。
摘果の目的は、高品質化と連年安定生産です。表1の時期別肥大の目安を参考に、着果が多く、大きさが小さければ早く強めに摘果し、果実肥大を促進させます。また、果実が上向きで果こう枝が太いほど大玉で糖度が低く、樹冠赤道部の果こう枝が細く下向きの果実ほど、糖度が高く高品質となります。
また、昨年のように夏秋期の高温乾燥による日焼け果が発生することが多くなっていますので、着果部位を考慮して、果実が大きくても、直射日光があたる果実より、葉の下に隠れるような果実を優先的に残すようにしましょう。

(1)極早生
着果の多い園では粗摘果が遅れると小玉果が多くなる恐れがあります。粗摘果(7月上~中旬)は、内なり、裾なりを確実に摘果するとともに、着果が多い部分(枝)の極小果を摘果しましょう。仕上げ摘果は、肥大や果実品質にあわせて、8月中旬から小玉果、傷果、病虫害果を中心に摘果します。
着果の極端に少ない園では、摘果は急がずに、仕上げ摘果以降に実施しましょう。
また近年は、秋雨により収穫前に果実が肥大し、品質低下を招くことがあるため、樹上選果で調整できるよう若干多く着果させておきましょう。

(2)早生
着果が少ない樹では、通常より摘果時期を遅らせ、軽めに行います。特に着果が少ない樹では、粗摘果は行わず、仕上げ摘果(8月下旬~9月上旬)や樹上選果(10月上~中旬)で調整します。
着果が多く、新梢発生が少ない樹では、粗摘果(7月中~下旬)で内なり、裾なりを確実に摘果するとともに、翌年の結果母枝を確保するため、側枝34本に1本の割合で、枝先から50cm程度まで果実を全摘果する枝別摘果を行いましょう。

(3)普通
着果量が少ない樹では大玉になりやすいため、摘果時期を出来るだけ遅らせ、極小果や大玉果を10月中旬に樹上選果で除去します。
着果が多い樹では、仕上げ摘果を中心に極大果、極小果、傷果、病虫害果を摘果します。

品質向上対策

(1)シートマルチの実施
温州みかんでは、高品質果実生産を目的に、透湿性防水シートを被覆する栽培法(以下、シートマルチ栽培)により降雨を遮断し土壌を乾燥させ、樹に水分ストレスを与えることで糖度の上昇を図ります。特に土壌が乾燥しにくい園では早めに被覆します。近年は集中豪雨などによりシートマルチ内に雨水が入り、糖度が低下する園が多く見られます。そのため、園内の排水対策を行うとともに、株元から雨水が侵入しないようにしっかり被覆し、効果的なシートマルチ栽培を行いましょう(図1,写真1)。
更に目標とする高品質果実が生産できているか定期的にチェックすることも必要です。820日時点の果実糖度に応じた対策を表2に示していますので、目標糖度に達するための土壌水分管理の目安として活用してください。

図1 完全マルチの実施方法(右:平坦地、左:階段畑)

写真1 株元までしっかり被覆

※すべての図表は令和4年産熊本県果樹対策指針より引用

(2)フィガロン乳剤の散布
温州みかんの収穫時の糖度は、果実生育初期(7月~8月)の糖度と相関があります。
そこで果汁集積初期(7月上中旬)にフィガロン乳剤を散布し、根の伸長を止め、養水分の吸収を抑制することで樹体に水分ストレスをかけて糖度を向上させます。
1回目の散布は、満開後6070日を目安に20003000倍で散布します。2回目の散布は、気象条件や樹体の水分ストレス状態に応じて行いますが、樹勢が良好な樹では1回目散布から20日後を目安に3000倍で散布します。
なお、フィガロン乳剤による樹勢低下を防ぐため、発根を確認してから散布します。また、樹勢の弱い樹では、さらに樹勢が衰弱するため散布を控えます。

おわりに

高品質果実生産のためには夏秋期の管理が非常に重要です。暑い時期の作業となりますので、体調管理にも十分注意し、計画的に高品質果実生産に取り組みましょう。

県北広域本部  鹿本地域振興局  農業普及・振興課

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