落葉果樹の晩霜対策と病害虫防除

はじめに

3月から4月にかけては、晩霜害に注意が必要です。生育ステージが進むほど低温に弱くなるので、気象情報に注意し必要に応じて対策をとりましょう。
また、越冬病害虫を防除する時期でもあります。前年に病害虫の発生が多かった園では、令和5年に持ち越さないよう、生育が始まる前にできるだけ密度を減らしておきましょう。

晩霜対策

落葉果樹は生育ステージが進むほどに耐凍性が弱まり、特に開花期前後は晩霜害を受けやすい状態となっています。午後6時の気温が10℃以下で湿度50%以下、1時間に1℃以上気温が低下している、夜間に風がなく快晴で星がきれいに輝いて見える時は、翌朝降霜の恐れがあります。表1、表2を参考に危険温度を判断し、対策をとりましょう。

※危険限界温度は、植物体温度がこの指標以下に30分間おかれた場合、各器官が障害を受ける温度

①事前対策
晩霜が心配される園では摘蕾(てきらい)は控えめにして、花数を多く確保しましょう。また、冷気の停滞防止で防風樹の下枝の刈り込みや防風ネットの裾を開放します。園地は除草してマルチは行わず、裸地状態を保つことで日射により地温が高まるようにします。

②散水氷結法
スプリンクラーで樹上から散水し、植物体温を0℃より下がらないように維持する方法です。凍霜害軽減効果は最も高いですが、十分な水源が必要です。気温が氷点下に下がる前に散水を開始し、翌朝、結氷が融けだして水が滴る頃まで連続して散水します。

 

③燃焼法
燃焼資材(デュラフレーム、シモカットなど)を10aあたり30個以上設置します。特に冷気の流れ込む方向(風上側)に多く設置します。弱い火力でもたくさん設置することで温度ムラが生じにくく、効果が高まります。気温0℃を目安に点火します(図1)。凍結してからの急激な温度上昇はかえって被害を助長するため注意してください。
使用の際には煙など周辺環境には十分配慮してください。

図1 気温の低下と点火のタイミング(果樹対策指針別冊より)

④送風法
ファンを使って、逆転層上部の暖かい空気と地表面の冷気を攪拌(かくはん)することにより、園地の気温低下と樹体温度の低下を防ぐ方法です(図2)。
作動温度は4℃に設定します。昇温効果は1~2℃であるため、-3℃を下回る恐れのある場合は燃焼法との併用が必要です。また、翌朝は気温が十分に上がる8~9時まで作動させておきます。

図2 逆転現象時の大気温度と高さの関係(果樹対策指針別冊より)

凍霜害を受けた場合の事後対策

開花が遅れた花にも人工授粉することで結実を確保しましょう。また、健全果と被害果の判別ができるようになってから摘果するようにしましょう。

病害虫防除

令和4年度の病害虫発生状況はいかがでしたか?発生が多かった病害虫は、園内の越冬密度も高まっていると思われるので、防除を徹底しましょう。

ナシ黒星病(写真1)

黒星病の病原菌は昨年罹病(りびょう)した落葉や芽基部で越冬しています。発芽前の殺菌剤(キノンドーフロアブル、オーソサイド水和剤80など)散布で芽基部の発病を抑えるとともに、落葉は集めて園外に持ち出すか、ロータリーなどで粉砕して土中にすきこみます。

写真1 花そうの黒星病

ニセナシサビダニ(写真2)

発芽前の2月下旬までにクムラス(水和硫黄剤)300倍を散布してある場合、概ね5月まで発生を抑えられます。クムラスは春期以降の散布で葉や花弁に薬害が生じる恐れがあるので、発芽前までに使用しましょう。越冬期防除ができない場合は、3月下旬~5月下旬の間に殺ダニ剤を2回散布して寄生密度を抑えましょう。散布する際は、ニセナシサビダニが多く寄生する新梢(しんしょう)先端まで薬液がかかるように丁寧に散布することが重要です。

写真2 ニセナシサビダニによるモザイク病と従来被害の混発

ナシマルカイガラムシ(写真3)

越冬世代へのマシン油散布が効果的ですが、マシン油の散布を控えている園では2月中旬~3月上旬(発芽前)にアプロード水和剤1000倍+アビオンE1000倍を散布します。ただし、薬剤の感受性低下を避けるため、年1回の使用とします。

写真3 ナシマルカイガラムシ

粗皮(そひ)削り(カキ、ブドウ、ナシなど)

果樹の樹皮は古くなると表面に亀裂が生じ、その隙間に病原菌やハダニ類、カイガラムシ類などが入り込み越冬します。鎌や高圧洗浄機などを用い、表面を削り取ることで越冬場所をなくし、越冬病害虫の密度を下げることができます。

 

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

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