宿根カスミソウ栽培におけるLED電球の電照効果について

はじめに

熊本県は、古くから宿根カスミソウの栽培が盛んであり、現在、作付面積および出荷本数が全国第1位の産地です。また、2022年産における熊本県の宿根カスミソウ生産実績は、作付面積が 77.5ha、産出金額が約16億円で、主要切り花品目の中でも作付面積および産出金額がもっとも多い品目となっています。
長日植物である宿根カスミソウでは、日長が短くなっていく秋季定植の作型等で電照を利用し、長日環境にすることで生育を促進させる栽培が行われます。現在、主な電照用光源には、白熱電球が利用されていますが、「二酸化炭素削減」「省エネ」「節電」を求める社会情勢により、代替光源の探索が行われています。花き生産においても、キクをはじめとして様々な品目の光反応が解明されており、今後白熱電球から消費電力の少ないLED電球への切り替えが進むと考えられています。そこで今回は、宿根カスミソウにおけるLED電球による電照の効果について紹介します。

宿根カスミソウ栽培における電照の活用について

宿根カスミソウの短日期における開花促進には電照が有効です。電照の時間帯は終夜電照が最も効果が高いですが、4時間程度の深夜電照が一般です。また、一番花において電照を開始するタイミングは摘芯直後、終了のタイミングは発蕾時とします。栽培終了時まで電照すると頂花部の節間長が伸長して草姿が崩れるため注意が必要です。なお、二番花においては、生育期の電照は、ロゼット化の防止や茎の伸長と開花の促進を目的として行われます。
菊池地域で10月下旬定植の作型において、摘心直後から2週間白熱電球にて電照を行う区とLED電球にて電照を行う区を比較した結果、両区に開花期や草丈、品質に大きな差や問題は見られず、LED電球を白熱電球の代替光源として利用可能だということが示されました(表1)。

光源の影響について

電照栽培に用いられている白熱電球について多くの企業が生産を中止しており、今後電球の価格高騰や販売終了が懸念されている状況です。
また、花きの電照栽培に有効な光は、作物の生育に対して単に明るさだけでなく、光の波長などが深くかかわっています(図1)。そのため、農業用以外のLED電球やその品目に合っていない波長のLED電球を使用しても効果が見られません。宿根カスミソウにおいては、赤色(630nm)+遠赤色(730nm)の混合光による電照で開花促進効果およびロゼット化防止効果が高いことが知られています。
白熱電球はLED電球と比べて、導入費が安価ですが、LED電球よりも電気料金が大きく、耐用年数が1~2年と短いため年間の経費は高くなります。LED球の寿命は4万時間といわれているため、宿根カスミソウの栽培のみで使用すると耐用年数が222年となってしまい現実的ではありませんが、物理的な破損を加味して、仮に耐用年数を30年としても、白熱球より年間経費は抑えられることになります(表2)。

図1 3種類の「電球色」光源の分光分布

導入に当たっての留意点

宿根カスミソウ栽培において白熱電球からLED電球に切り替える場合は、花用のLED電球等の波長が適している電球を使用します。また、導入事例のない品種や作型、地域で利用する場合は、予め現地試験の実施等により十分な検討を行う必要があります。
また、LED電球は、照射範囲が白熱電球よりも狭く光量にムラが生じることがあるため、設置する間隔や高さに注意する必要があります。メーカーが推奨する設置基準等を参考に設置してください。

県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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