かんきつ類の整枝・剪定(せんてい)のポイント

はじめに

整枝・剪定の目的は、①高品質果実の安定生産、②作業性の改善、③着花量の制限(花と芽のバランスをとる)があります。
令和4年産の温州みかんは概ね裏年傾向で着果量が少なかったことから、令和5年産は着花が多い表年となることが予想されます。表年は、隔年結果を是正するチャンスの年であるため、連年安定生産に向けた剪定を確実に実施しましょう。

縮・間伐の実施

まずは、園内を見渡し、密植になっていないか確認しましょう。密植の解消が遅れてしまうと、樹が高くなったり、作業道に枝が張り出すだけでなく、日当たりのよい樹冠上部のみに着花し、収量が減少します。また、作業効率が悪くなり、病害虫の発生、果実品質の低下を招きます。列ごとに永久樹と間伐樹の区別をして、縮・間伐が遅れないようにしましょう(写真1)。

写真1 間伐実施園(間伐によって管理のしやすい園地へ)
(フルーツ&フルーツ(2021年1月号))

いざ、整枝・剪定へ

(1)整枝
剪定を行ううえで、最初に行う作業が整枝です。骨格となる主枝・亜主枝の配置ができていれば、剪定時に切る枝の優先順位がつけやすくなります(図1)。

【4~5年生までの幼木】
主枝、亜主枝の骨格枝以外の立枝を早めに除き、骨格枝を明確にし、樹冠拡大を優先させます。
【成木】
樹高が高くならないように主枝先端を下げ、主枝と競合する主枝背面から発生した枝や亜主枝上の立枝や下枝への被さり枝、内向枝を除去し、樹の形を整えましょう。

図1 骨格枝を明確にする整枝

(2)剪定
まず、作業の効率化を図るため、樹高を2.5m以下に切り下げます。しかし、樹高が高くなった樹を一気に切り下げた場合、切り口部位から枯れこみ、樹勢が弱るため、数年かけて段階的に実施します。切り下げる程度は、切り口と同程度か切り口よりやや太い側枝が発生している分岐部までとします。樹高の切り下げ後、主枝と競合する側枝のせん除、樹冠内の受光状態を良くして、薬剤散布がきちんとかかるように、内向枝、逆向枝のせん除、亜主枝から発生した徒長枝、重なり枝や地際部などの下向きの側枝をせん除していきます(図2)。ただし、樹あたりの剪定量が20%を超える過度の剪定は、樹の生理に変化をきたし、バランスを崩す恐れがありますので、切りすぎには注意が必要です

図2 剪定する枝のイメージ

温州みかん

近年、早生温州以降で園地や樹毎の着花量にバラつきが見られていますので、着花予想に応じた剪定が重要となります。前年の収穫量や樹の状態(樹勢)を踏まえて着花程度を予測し、剪定時期や切り方を調整します。着花が多いと予想される樹から順に剪定を実施しましょう。

(1)着花が多いと予想される樹
剪定時期を早め、新梢(しんしょう)を確実に発生させることが重要です。側枝上の徒長枝や重なり枝など、結果部位が込み入る箇所の枝を間引きます。また、側枝の切り返しや果梗枝を利用した予備枝の設定を行います。

(2)着花が少ないと予想される樹
剪定時期をできるだけ遅くし、間引き主体の軽い剪定を行います。着花が確認できるまでは、徒長枝や果梗枝の軽い間引き剪定に止めておきます。着花確認後、花に日が当たるよう被さり枝をせん除したり、新梢との養分競合による生理落花を防ぐため、結果母枝周辺の果梗枝等をせん除します。

不知火類

不知火類は、間引き主体の剪定を行います。樹冠内部まで日が当たるように主枝間や亜主枝間、緑枝群間をあけることと併せて、弱小結果母枝は1520㎝の優良結果母枝まで切り戻しましょう。樹勢は、不知火、不知火M-16a、「肥の豊」の順に弱く、樹勢の弱い順から剪定を実施します。
また、着花が多いと予想される樹では、枝先が総状花となった場合、樹勢低下や生理落花が多くなる可能性がありますので、優良な単性有葉花があるところまで切り戻します(図3)。一方、着花が少ないと予想される樹では、着花確認後、花周辺の芽かき、摘心、被さり枝のせん除を行い、花に日が当たるようにしましょう。

図3 優良な単性有葉花で切り戻す

さいごに

高品質果実を連年安定生産するために、前作の着果量や樹勢に応じた適切な剪定を行うことが重要です。まずは、整枝・剪定でより良い園地環境づくりを行いましょう。

県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課

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