かんきつ類の整枝・せん定のポイント~令和4年産の安定生産に向けて~

はじめに

かんきつ類の安定生産のためには、品種系統や園地条件に応じたせん定を行うことが重要です。今回は、せん定の考え方と、基本的なせん定方法を説明します。

整枝・せん定の目的

整枝・せん定には、以下の目的があります。
①「高品質果実の連年安定生産」
樹が光合成しやすい環境を作ることで着花促進、品質向上を図るとともに、発芽を促し、優良な結果母枝を確保することで毎年安定した生産が可能となります。
②「作業性の改善」
樹高の制限や空間を作ることで、摘果・収穫・防除等の管理をしやすくします。
③「防除効果の向上」
かけムラが少なく均一に農薬散布できる樹形とし、さらに枯れ枝を除去することで黒点病予防にも繋がります。

縮伐と間伐

せん定を始める前に、まずは園地全体を見渡し、密植になっていないか確認しましょう。密植だと光が当たらず、整枝・せん定の効果は得られません。
まず、樹が重なり日当たりが悪くなってないか確認してください。密植であれば、縮伐か間伐を実施し、樹と樹の間が1m程度を目安に、人が通れる幅を確保します。(写真12)

写真1 間伐前
写真2 間伐後

整枝の方法

整枝とは、樹の主枝や亜主枝などの骨格枝を整えることです。図1のように主枝や亜主枝の配置がきちんとできていれば、果実をつける側枝をバランスよく配置でき、高収量が確保できます。
樹高が高い場合は、作業の効率化を図るため、樹高2.5mを目安に切り下げましょう。一度に急激に切り下げると、大きな切り口部位からの枯れ込み、樹勢の衰弱などを生じやすいので、樹冠内部からの新梢発生を促しながら2~3年かけ切り下げを行ってください。
4~5年生程度の若木では、主枝、亜主枝を決め、樹形を乱す立枝を早めに除き、樹形を整えます。

図1 開心自然形の樹形(岸野功氏作図)

具体的な整枝の手順

2のように側枝の配置と結果母枝を確認しながら以下の枝をせん除することにより樹形を整えます。

①主枝の先端(低樹高化)
②内向枝、主枝と競合する枝
③逆向枝
⓸亜主枝から出た立枝
⑤重なり枝
⑥地際部など下向きの枝

図2 せん定が必要な枝

温州みかんのせん定

温州みかんでは、前年の収穫量や樹の状態(樹勢)をふまえて、着花量を予想し、せん定時期や切り方を調整することが重要です。
① 着花が多いと予想される場合(R4表年予想、極早生・普通)
(方法)極早生については花芽抑制のために図3のように果梗枝を利用して、新梢の発生を促します。普通については、通常よりも早めに間引きせん定中心に切り返しを組み合わせたせん定をします。
②着花が少ないと予想される場合(R4裏年予想、早生・中生)
(方法)せん定時期は遅くし、間引きせん定主体で、軽めのせん定にとどめます。また、着花がかなり少ないと予想される場合は、発芽後、花芽を確認してからせん定します。新梢発生後、混んだ部分は切り戻して、徒長枝は芽かきします。

3 果梗枝を利用した予備枝

不知火類(「肥の豊」M-16a)のせん定

「肥の豊」は、樹勢が強いため「不知火」M-16aよりせん定時期を遅らせやや軽めに実施します。不知火等は、節間が短く枝梢発生が多くなり、枝が混みやすくなるため、間引きせん定を主体に混み枝をせん除し、樹冠内部の受光体勢を良くします。また、果樹生産での養分消費が大きく前年の結果枝からは弱小枝しか発生しないため、樹勢が衰弱しやすくなります。そのため、前年の結果枝はせん除します。また、短く伸びた側枝は、着花があっても着果しにくく樹勢の低下を招きます。このことから、良質な緑枝が発生している部位まで切り戻しを行うことにより、着花量の制限と新梢の発生を促し、樹勢の維持・強化を図ります。

さいごに

高品質安定生産のためには、整枝・せん定だけでなく、土づくり、施肥、かん水、摘果、病害虫防除などその年の天候に対応した管理を適期に適切に管理を行う必要があります。
まずは、整枝・せん定で、園地の作業性を改善し、樹体内部まで光が入るように、よりよい園地環境づくりから始めましょう。

県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課

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かんきつ類の整枝・せん定のポイント