イネ出穂後の管理について~出穂後の水管理と病害虫について~

はじめに

8月下旬から9月上旬は、イネが出穂する時期となります。出穂後の管理は、イネの品質面に大きな影響を与えます。また、病害虫の発生によって、収穫物への影響が大きくなる時期になりますので、そちらにも注意しましょう。

出穂後のほ場管理

出穂前後の時期は、イネ栽培の中でも最も水を必要とする時期となります。穂ばらみ期~穂揃い期には、水田内の水を絶やさないようにしましょう。その後は間断かん水をし、根に水分と空気をバランスよく供給します。具体的には、2~3㎝の深さでたん水し、水がひいてきたら再度入水します。根の活力を増加させるためにも、間断たん水を徹底しましょう。また近年は、気温上昇による白未熟粒の発生も増加しています。夜間にかけ流しを行い、ほ場内の温度を下げる等の対策が有効です。
収穫期においての落水の目安は、出穂後約30日で、収穫の7~10日前から始めます。落水を早期に行い過ぎると、白未熟粒や胴割米の発生を助長しますので、適期に行いましょう。収穫の適期は、籾の85%が黄化したときです(図1)。収穫時期が近付いた時には、ほ場をよく観察して、適期に収穫できるよう心掛けましょう。

図1 刈取適期7~10日前
(籾黄化率50~70%)
※赤丸は黄化籾、青丸は未成熟
刈取適期
(籾黄化率85~90%)

出穂後注意すべき病害虫

①トビイロウンカ
昨年、一昨年と県内のみならず、西日本各地に大きな被害をもたらした害虫です。特に昨年は、合志市に設置された予察灯への誘殺数(6~7月)が平年の約16倍になるなど非常に飛来が多くなりました(令和2年度病害虫予察警報1号より)。
トビイロウンカは、梅雨の時期に日本へと飛来し、イネの株元に寄生します。水田内での世代交代を経て莫大な量まで増殖し、その吸汁害により耐え切れなくなったイネが枯れることで、坪枯れ(写真)が発生します。
トビイロウンカの被害を防ぐためには、箱剤の施用の徹底、本田での適期防除が重要となります。病害虫防除所が発表する情報を活用して適期防除に努めましょう。

坪枯れ

②斑点米カメムシ類
玄米の等級検査において、等級低下の原因となる被害粒の一つ「斑点米」は、出穂後にカメムシによる吸汁を受けることで発生します。斑点米を起こすカメムシは様々な種類がありますが、熊本県の中生品種では、ミナミアオカメムシ、クモヘリカメムシが主となります。どちらも水田付近に生えるイネ科雑草で発生し、イネが出穂すると加害します。そのため、水田付近の除草をしっかり行うことで、発生を抑制できます。ただし、イネの出穂直前で除草を行ってしまうと逆にほ場内へカメムシを追い立ててしまうことになりますので、出穂2週間前までに除草を終えておきましょう。

③いもち病
いもち病は、イネ栽培のいずれの時期にも発生します。発生時期、部位によって、苗いもち、葉いもち、穂いもち等呼び方が変わっていきます。いもち病は気温が20~25℃、降雨等でイネの葉が濡れている場合が感染しやすい条件となります。本年は、8月上中旬の長雨で、今後いもち病の多発が懸念されます。ほ場での発生に注意し、早期の防除を心掛けましょう。

④紋枯病
紋枯病は、イネの表面や葉しょうに菌核(病原菌の菌糸の塊)を作り、多発すると減収や品質低下の原因となります。また、秋に作られた菌核は、水田内に落ちて越冬し、翌年の発生源となります。紋枯病菌は高温多湿を好み、近年の気温上昇の影響で、発生の増加が懸念されている病害虫の一つです。多湿を防ぐため、過度な密植、窒素肥料の施用を防ぐ、薬剤防除の徹底を心掛けましょう。

 

写真 紋枯病

おわりに

出穂後の管理は、長い水稲栽培の集大成となる大事な管理作業です。この時期の管理が、特に品質面に大きな影響を与えることになります。しっかり管理を行い、良い米を作っていきましょう

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

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