水管理で気象災害に強いイネづくり

はじめに

「最近、お米の収量が以前より減ったなあ」、「今年もまた二等か・・・」、「異常気象だったから仕方ない」。そう思っている農家の方も大勢いらっしゃるでしょう。確かに、近年は大型台風や豪雨等による甚大な農業被害が毎年のように発生しており、予期せぬ時期の大雨、長雨等が水稲の作柄に影響する事例も増えています。このような気象変動に翻弄され、稲作は今後も不作を繰り返すしかないのでしょうか?
昔から、水管理は稲作の基本中の基本とされています。下図の生育ステージごとに特徴的な水管理法は、どれも稲を健全に保つとともに、多少の気象変動であれば乗り越えられる強い稲をつくるための手法ばかりです。
本紙では、これらの水管理について、それぞれの役割と基本的な実施方法を紹介します。これを機に稲作の基本に立ち返り、水管理を徹底することで、手を打たなければ不作となるはずの稲から少しでも良い米粒を少しでも多くとってみませんか。

図 生育ステージごとの水管理

生育ステージごとの水管理

①移植直後~活着期:深水で苗痛みを防ぎ、活着を促す!
移植直後は3~4cmの深水にします。これにより、田植え時の断根やダメージで弱った苗を脱水から守るとともに、早期作や早植え栽培においては保温効果も加わることで、活着を促します。
また、除草剤散布時は、効果を最大限にするために、落水口を確実に閉じ、一旦深水にしたのち、入水量を微調整し、処理期間中に田面が露出しないようにしましょう。

②活着後~分げつ期:浅水と間断灌水(かんすい)で分げつを促し、早く有効茎を確保する!
活着後は2~3cmの浅水にします。これは、水温向上を図るとともに徒長を防ぎ、分げつを促すためです。さらに、ガスの発生による根痛みを軽減するため、定期的に間断灌水を行いましょう。

⓷中干し:稲の草姿改善、土壌の通水性と地耐力の確保=稲作後半の成功に欠かせない!
中干しの効果は、「稲にストレスを与えて無効分げつを抑制するとともに倒伏に強い草姿にする」、「亀裂により通水性を確保し、以後に健全な根を多く、長く保つことができる良好な土壌状態にする」、「機械収穫に必要な地耐力を確保し、その分収穫前の落水を遅らせる」など多岐にわたり、最も重要な水管理といっても過言ではありません。
中干しの開始時期は分げつ数が有効茎=目標穂数に近づいた時期が適切です。例えば、栽植密度50/坪の場合、「ヒノヒカリ」では20/株程度、穂数型品種の「くまさんの輝き」では22/株程度を開始時期の目安とします。なお、排水が悪いほ場では、落水時に8~10条ごとに溝切り(写真1)を行うことで、排水性が格段に向上します。中干しの期間は一般に5~7日程度。田面に亀裂ができ、足を踏み入れても沈み込まず、足型が残る程度の硬さになるまで継続します(写真2)。

 

写真1 溝切りの様子
写真2 中干し中の田面

④中干し後~穂ばらみ期:間断灌水で太く丈夫な根を多く確保する!
土中に酸素を供給することで根の伸長を促し、太く丈夫な根を多く確保するため、中干し後は間断灌水を実施します。湛水(たんすい)状態から自然減水し、完全な落水状態を1日保つ(1サイクル4~5日)管理が標準的です。落水が遅いほ場は湛水2~3日+強制落水2日を繰り返してください。

⑤穂ばらみ後期~穂ぞろい期:深水管理で穂の伸長と開花・受粉をスムーズにする!
この時期は昔から「花水」といわれているほど、イネが水を最も必要とする時期です。茎や穂軸が急激に伸長し、開花・受粉する際に大量の水が使われるからです。水が不足すると、穂の抽出が悪くなるだけでなく、不稔籾発生の原因にもなります。深水で出穂と開花を助けましょう。

⑥登熟期:間断灌水を継続し、根の活力を長期間維持する!
登熟期間は、間断灌水により土中に水と酸素を適度に送り込むことで、根の活力を維持しましょう。収穫時期が近づくと生葉が減るとともに気温も下がって蒸散量が低下するので、これに合わせて、徐々に落水期間を長くするとよいでしょう。高温条件が続く場合、夜にかけ流しを行うと、白未熟粒の発生による玄米品質の低下を防ぐことができます。
収穫に向けての落水の開始時期は収穫予定日の10日1週間程度前が目安です。これより早く落水すると、玄米の充実が悪くなり、収量、品質、食味が低下してしまいます。

台風接近時の水管理
台風通過前後は深水管理を行うことが重要です。風の影響を軽減して倒伏を防ぐとともに、強風による蒸散の促進や葉痛みによる急激な脱水を防ぐためです。さらに、強風にさらされたイネの回復を図るため、台風通過後2日程度は深水管理を行いましょう。

 

最後に

令和4年熊本県産米の品質低下から学ぶこと
令和4年の熊本県水稲は台風14号の通過後に多くのほ場で脱水症状や青枯れ症状(写真3)に陥り、米の品質が低下しました。その程度には地域やほ場によって大きな差があり、中干しの不徹底や台風通過時に湛水していない等、管理との関連が強く疑われました。稲の脱水症状を防ぐためには健全な根が多く必要で、そのためにも中干しや間断灌水による根の活力維持は極めて重要と言えます。また、その根に水を供給するとともに、風の影響を軽減するため台風前後の深水湛水は極めて有効だったのです。そのことが改めて確認された事例となりました。
台風や長雨などの気象災害を避けることはできませんが、これに備えることで被害を最小限に抑えることはできます。今回紹介した基本的水管理を徹底し、気象災害に強いイネをつくりましょう。

写真3 青枯れ症

県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課

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