水稲の刈取適期について

はじめに

10月は、県内の平坦地を中心に、多くの生産地で収穫作業が始まり、多くの生産者が忙しくなるかと思います。
水稲では、出穂後の積算気温が収穫時期に大きな影響を与えますが、年々日本の平均気温が上昇しています。田植えから収穫期までの平均気温が高く推移すると、出穂が早まり、登熟期間が短くなるため、刈取適期を逃さないよう収穫までの管理について見ていきましょう。

出穂から収穫期までの水管理

出穂後の水管理は、水を貯めて自然落水させる間断かん水を行います。水を入れることでイネの養分吸収を促すのはもちろんのこと、水を抜き、土壌中に酸素を供給し、ガスを排出することで根腐れを防止します。

刈取適期について

イネの刈取適期は、黄化率※18085%以上になったタイミングです(写真1、2)。黄化率を調べる際は、最低でも異なる3株以上から穂を採取して平均値を算出しましょう。また、刈取適期の参考目安として、出穂期からの積算温度※2も活用できます。熊本県では、「くまさんの輝き」や「ヒノヒカリ」などの中生品種は積算温度9501,050℃程度(出穂後4245日程度)を目安としています。また、籾水分が25%前後のときに刈取適期の目安となるので、可能であれば、水分計で籾水分率を計測するもの一つの方法です。

※1 黄化率…穂1本ごとの緑色が抜けた籾の割合  (黄化率=緑色が抜けた籾数/(全籾数-不稔籾数)×100
※2 積算温度…日平均気温を加算した温度   (例、平均気温25℃が30日続いた場合、積算温度は750℃となる)

写真1 黄化率(穂)
写真2 黄化率(籾)

※写真1、2:品種「くまさんの輝き」

刈取の注意点

刈取る際の注意点として、①落水時期、②刈取時期が挙げられます。刈取前の①落水の目安は、出穂後35日程度(収穫710日前)で、これより早く落水すると、白未熟粒や胴割れの発生につながります。②早く刈りすぎると、籾へのデンプン蓄積が不十分になるので、青未熟や充実不足など未熟粒が発生し、品質及び収穫量の低下につながります。一方、遅く刈りすぎると、籾の乾燥が進み、胴割れや茶米などが発生し、品質低下につながるため、刈取時期には注意しましょう。
また、畦際(あぜぎわ)のイネは色が落ち、刈取適期を迎えていても、ほ場内部の穂(籾)は水分と色が残っているかもしれないため、しっかり観察してから刈取りましょう。

収穫残渣(ざんさ)のすき込み

来年度の作付けに向けて、収穫後に残った稲わらやひこばえをすき込み、土づくりを行いましょう。有機物のすき込みは、土壌の団粒構造の形成や施肥量の削減、土壌の生物的緩衝作用の向上等の効果があります(写真3)。すき込みは収穫後できるだけ早く行い、高い地温によって微生物の働きを活性化させ、稲わらの分解や腐熟を促進させましょう。石灰窒素等の土壌改良剤を一緒にすき込むとさらに分解や腐熟が進むので効果的です。
すき込み時期が遅くなると、翌年の栽培期間中にも有機物が分解されるため、メタンガスや硫化水素の発生や酸素不足、窒素飢餓等の問題が発生し、根腐れや生育不良の原因となるため注意し、可能であれば冬までにすき込むよう努めましょう。

写真3 すき込みの様子

最後に

令和3年は、収穫期が高温多照であったため、刈遅れた生産者もあり、検査では胴割れ米や茶米が多く見受けられました。このように丹精込めてつくったイネが最後の最後で品質低下とならないためにも、刈取適期を逃さないように、気温やほ場の状態のこまめな観察に努め、おいしいお米作りを行いましょう。

県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課

 

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