シリーズ/気象災害に強いイネづくり ②田植えから初期管理

はじめに

近年の稲作は、地球温暖化に伴う高温障害や気象災害により、収量・品質が不安定な状況です。気象災害に負けずに収量・品質を高めるにはどうすればよいか?それを考えると、先人たちの知恵の結晶ともいえる基本技術に行き着きます。基本技術を励行することにより、稲体を健全に保ち、“気象災害に強いイネづくり”が可能になります。
今回は、田植えから初期管理までのポイントを解説します。「こんな方法知らなかった!」という方は、今回の内容をもとに今までの栽培方法を振り返ってみてはいかがでしょうか。

施肥~代かき

①施肥時期を適切に

近年は、田植えが梅雨時期であることなどを理由に、田植え前の晴天で作業性が良い時期に、早めに施肥を行うケースが増えています。施肥から田植えまでの期間が空きすぎると、基肥の成分が流亡するため、せっかく施肥した肥料を無駄にするだけでなく、基肥一発肥料の場合は、緩効性肥料成分が本来効いてほしい時期に効かず、登熟・充実不足となる場合があります。施肥はできるだけ代かき直前に行うようにしましょう。

②丁寧な代かき

イネの生育や除草剤の効果を安定させるため、代かきは均平になるよう丁寧に行いましょう。湛水(たんすい)深をできるだけ浅くした「浅水代かき」がおすすめです。浅水代かきは、堆肥や刈り株、雑草を土中に埋めこみます。また、ほ場を均平にすることで、除草剤の効果を高めるだけでなく、水稲の生育均一化にも効果的です。代かき時の入水量は、「田面に土が8割、水が2割見える状態」が目安です。

田植え

①適期に田植え

平坦地で中生~晩生の主食用米を生産する場合、6月中~下旬が田植えの適期です。田植えが早すぎると、出穂~登熟期に高温となり、高温障害による品質低下に繋がります。逆に田植えが遅すぎると、登熟不良を起こす場合があるため、適期の田植えに努めましょう。
また、育苗日数も重要なポイントです。苗丈、葉齢が適正となったら、速やかに田植えを実施しましょう(表)。苗の老化は、活着不良や病害の発生につながります。育苗方法に合わせて、田植え予定日から育苗日数を逆算して播種(はしゅ)日を設定しましょう。

②栽植密度を適切に

栽植密度は、15/㎡(50/坪)~18/㎡(60/坪)程度が適切です。極端な疎植(11/㎡以下)は、地力が低く施肥量が少ない場合には減収に、逆に地力が高く施肥量が多い場合には未熟粒増加による品質低下につながる可能性があるため、注意が必要です。

③植付本数、植付深度も重要

植付本数は、3~4本/株を目安としましょう。植付本数が多いと、株が大きくなるにしたがって、株の中で分げつが競合するため、かえって収量低下の原因となります。
植付深度は、2~3cmの浅植えを心掛けましょう。深植えにすると活着や初期生育が劣り、下位節からの分げつが抑制されるため、収量低下につながります。

除草剤

①効果的な除草剤の使い方

初期除草剤を水田に散布すると、土壌表層に「処理層」と呼ばれる除草剤の膜が形成され、処理層に触れた雑草は除草剤の成分を吸収して枯死します。効果的に除草剤を使用するためには、発生雑草に合った薬剤の選定を行うことが重要です。また、使用時期を誤ると、十分に除草剤の効果が得られない場合があるため、製品のラベルをよく読み、使用時期や処理方法を守りましょう。

②除草剤散布後の水管理のポイント

初期除草剤の効果を高めるには、前述の「処理層」を壊さない水管理が重要です。除草剤散布後、7日間は湛水状態を保つことで、より強い処理層が作られ、除草効果が高まります(図)。自然減水により湛水状態を保てない場合には、水尻をしっかりと閉めたうえで少しずつ足し水を行い、田面が露出しないようにしましょう。
※除草剤散布後の水管理期間以外は、次項の水管理を励行し、稲体の健全化に努めましょう

図 除草剤散布後の水管理

田植え後の当面の水管理

①田植え直後~活着期の水管理のポイント

田植え直後は、搔(か)き取り時の断根と、葉からの蒸散で稲体が弱っており、水分が不足すると、田植えした苗の葉が萎凋(いちょう)することがあります(植え傷み)。植え傷みを防止し、活着を促すため、田植え直後から活着までは、3~4cm程度の水位を保ちます。

②活着後~分げつ期の水管理のポイント

田植えした苗は、概ね4日~1週間程度で活着します。活着後は、徒長を防ぎ分げつを促すために、2~3cmの浅水にしましょう。また、麦や野菜等前作の残渣(ざんさ)や雑草をすき込んだほ場で湛水状態を続けると、土壌が還元状態となり、メタンガス発生や根傷みによる稲の弱体化を招きます。この場合は、間断かん水(3日湛水、2日落水等)を実施しましょう。

最後に

今回紹介した技術は、どれも「基本の“き”」といえるものですが、気象災害に対抗する手段としては、とても有効なものです。秋に良いお米を収穫できるよう、ぜひ取り組みましょう。

県北広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

気象災害に強いイネづくり②田植えから初期管理(PDFファイル)