水稲の分げつ期~出穂期の管理 ~水管理と追肥~

はじめに

近年では、幼穂形成期~登熟期頃の異常高温等によって、稲の品質や収量にも影響が見られるようになっています。今回は分げつ期~出穂期までの管理です。水管理と穂肥施用のポイントを確認し、暑さに負けないお米をつくりましょう。

分げつ期

①中干し前
田植え後、長期間の湛水管理や5~6月の気温上昇などによって、土壌中の有機物の分解が進み、ガス(メタン、一酸化二窒素)が発生します。こうしたガスの発生は根の生育阻害の要因となるので、間断かん水や夜間の中干しなどの水管理で、ガスを抜き、根に酸素を供給することで、根の活力を高めましょう。根を地中深くまで伸ばすことが後の稲の生育に大きく影響します。
※間断かん水は、ほ場条件によって異なりますが、目安として2日かん水・3日自然落水となっています。

水管理の方法

②中干し
有効分げつを確保することは重要ですが、多すぎると養分供給が追いつかず、1本1本あたりの茎が細く、倒伏しやすくなります。さらに、過剰分げつは、登熟歩合の低下や受光体勢の悪化による下位葉の枯死といった悪影響を及ぼします。そのため、中干しを実施し、土壌水分の吸収を抑え、過剰分げつを抑制しましょう。
中干しの開始時期は、目標とする穂数の80%を確保した時で、期間は1週間程度です。中干しの程度は、田面に小さな亀裂が入り、軽く足跡が付くぐらいまで干すのがよいでしょう(写真1)。水抜けのよい田んぼでは、期間を短縮してください。水が抜けすぎる場合は、かけ流しを行ってください。反対に、排水が悪い田んぼでは、落水時に8~10条間隔に溝切りを行い、水抜けを良くしましょう。

③中干し後
中干し後は、徐々に水を入れ、出穂期までは間断かん水(足跡に水が溜まる程度まで減れば、水を入れる)を行います。

写真1 中干しの程度

幼穂形成期

幼穂形成期は、これまでの分げつの確保(栄養成長)から、穂の形成(生殖成長)に生育が切り替わる時期となります。分施を行っているところでは穂肥の時期となります。穂肥には、穂の形成に必要な養分を与えることで、稔実歩合を向上させ、収量を増加させる目的があります。しかし、穂肥のタイミングを間違えると、徒長、籾数の減少、食味の低下など生育に悪影響を及ぼします。そこで、ここからは、適切な穂肥の時期についてみていきましょう。
穂肥の時期は、農協などの耕種基準に「出穂○○日前に穂肥」と掲載されている場合があります。では、それが具体的にいつなのかは、幼穂と葉色から概ね判断できます。

①まず幼穂は、田んぼの畦から1m以上入った1株中の1番大きい茎を抜いて、図のように丁寧に剥き、幼穂の長さを測ります。幼穂長が2㎜の場合は、出穂20日前と判断し、穂肥時期の把握が可能となります(表1)。

幼穂の剥ぎ方

②次に葉色はですが、葉色が濃い(4.5以上)場合、穂肥時期は遅らせるか施肥量を減らすなどの対応が必要となりますので、(表2)を参考にされてください。
最近は、多くの農家が一発肥料利用されており、穂肥の機会が減っています。ただ肥効調節型肥料の成分溶出は、温度に左右されるため、著しい高温条件下では、肥効が穂肥時期まで持たず、充実不足が発生する可能性がありますので、注意してください。

出穂期

出穂期の前後は、水稲の生育で最も水を必要とする時期です。水が不足すると、幼穂の生育や稔実が悪くなるので、水を切らさないように深水管理とします。また、出穂期以降は間断かん水の管理としますが、この時期は台風などに伴うフェーン現象が発生しやすくなり、乾燥による不稔が生じることがあります。台風が接近する場合は、事前に深水管理(5~8㎝程度)に切り替え、イネの支持力を高めるとともに、乾燥を防ぎます。
最近は1日を通して、気温が高く推移していますので、根の健全化のため高温下での湛水管理は控え、こまめなかん水に切り替えましょう。

おわりに

はじめに述べましたが、最近は幼穂形成期~登熟期にかけて、気温が高く推移しています。高温に負けないイネをつくるには、過剰な分げつを抑え、稲体の受光体勢を良くし、地中深くまで根を張らせるなどの出穂期まで準備が重要です。
暑い時期ですが、健康な稲づくりのため、適切な管理を心がけましょう。

県南広域本部 芦北城地域振興局 農業普及・振興課

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水稲の分げつ期~出穂期の管理