表1のように、乾燥ストレスがかかり始めた時(葉の水ポテンシャル-1.0Mpa)15L/樹の少量かん水区と、3~5日おきに30L/樹の多量かん水区を設けると、少量かん水区において順調に増糖します。
しかし、園地によって排水性や土質が異なり、適正な土壌水分状態が異なるため、この少量かん水管理の目安が必要となります。
施設不知火類の高品質果実生産のための9月以降のかん水管理
はじめに
本県果樹の主要品目である「不知火」(デコポン)は、近年、秋期の大雨等の影響により、施設栽培において果実糖度が低下する傾向にあります。
そのため、施設栽培の高品質果実生産では、早めの天井ビニルの再被覆や樹体生育に応じた適正なかん水が重要になります。そこで、今回は適正なかん水管理の目安について紹介します。
かん水方法の違いによる果実品質
天井ビニル再被覆
9月以降、土壌をやや乾燥気味に管理するには、早めの天井ビニルの再被覆が大切です。加温栽培では9月上旬、無加温・屋根掛け栽培では、10月中旬までに実施しましょう。天井ビニルの再被覆が台風の襲来などにより止むを得ずできない場合には、タイベックシート等を全面に被覆し、降雨の過剰な土壌への浸入を防ぎましょう。また、施設内外の排水対策も併せて実施しましょう。
適正なかん水管理の目安(生育目標に応じたかん水管理)
まず、表2の9月1日時点のクエン酸含量が目標値よりも高い場合は、節水管理を遅らせましょう。クエン酸濃度が目標値をクリアしていれば節水管理を行い、果実糖度、横径の目標値に近づけるように節水管理を行いましょう。なお、現状の糖度が目標より低かったり、クエン酸濃度が高い場合は、これまでの管理を振り返り、温度管理やかん水、摘果管理等を改善していくことが重要です。
ここでは、加温栽培の9月以降の少量かん水管理の2つの目安を紹介します。
(1)果実横径の肥大量の目安
果実横径の肥大量は、土壌の水分状態に影響されるため、この肥大量を目安にかん水量を調整します。具体的には、9月上旬に平均的な樹3樹程度を選び、平均的な5果程度の果実横径を5日程度おきに計測し(写真3)、表3のように日肥大量が9月~10月中は0.2mm程度、10月以降は0.15~0.1mm程度となるように少量かん水を行います。
(2)土壌水分状態の目安
農研機構で開発された土壌水分目視計(写真4)を用いて、土壌水分の状態を目安にかん水量を調整します。土壌水分目視計の測定部分を地下20cmほどに埋設することにより、土壌の水分状態を把握することができます。表3のとおり、土壌水分目視計の1日当たりの水位低下量を9月以降3~5cm/日程度で維持する少量かん水を行う事で、高品質果実が生産されたことが報告されています。
ただし、水位低下量は土質などの園地土壌条件により異なることから、設置当初は、定期的な果実肥大量の確認や果実分析を行いながら、園地に応じた適正なかん水量を把握する必要があります。
おわりに
気象変動が激化する中、マニュアル通りではなく、個々の生産者がこれまでの栽培管理を振り返り、自ら改善していくことにより、「デコポン」合格率の向上を図り、高品質果実の安定生産につなげていきましょう。
天草広域本部 農林水産部 農業普及・振興課
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