①トビイロウンカ
梅雨の時期に日本へと飛来し、イネの株元に寄生します。防除を怠ると、水田内での世代交代を経て莫大(ばくだい)な量まで増殖し、その吸汁害により登熟不良や坪枯れが発生します。被害を防ぐためには、適切な箱剤の施用に加え、本田での適期防除が重要となります。本年は9月以降も気温が平年より高く、本種の発生に好適な条件となりそうです。ほ場の発生状況に注意し、要防除水準(8月中~下旬:10頭/10株、収穫30日前:30頭/10株)を超えたほ場では防除を行ってください。
techniques and methods
近年は温暖化の影響により、猛暑や干ばつ、大雨や長雨、大型台風等、気象変動が頻発しています。気象災害に立ち向かうためには、基本的な栽培技術を確実に行うとともに、イネの生育状況を良く見つつ、気象や病害虫発生予測等の情報を参考に、適切な管理をすることが重要です。
『気象災害に強いイネづくり』シリーズもいよいよ第5弾、最終回!
今回は登熟期から収穫後までに気を付けるポイントを幅広くまとめましたので、良質・良食味米を作り上げるために活用してください。
登熟期間は、水を溜めて自然落水を繰り返す間断灌水により、土中に水と酸素を適度に送り込むことで、根の活力を維持しましょう。また、高温条件が続く場合に、夜間のかけ流しを行うことで、玄米品質の低下を防ぐことができます。ただし、夜間のかけ流しは地区全体で取り組まないと効果が充分に発揮できないことに留意してください。
台風接近前から深めの湛水(たんすい)(5㎝目安、できるだけ深く)を行い、台風通過後2日程度も湛水を行うようにしましょう。深水にすることで水が稲体を支え、倒伏軽減効果が見込めます。ほ場条件に応じて可能な限り深くためましょう。台風通過前後のフェーン現象(高温の乾燥風)による脱水症状の軽減にも効果的です。風の影響による急激な脱水を防ぎ、稲を回復させてください。
※例外
⑴冠水した場合は、排水を行う。
⑵塩害・潮風害の場合は、速やかにほ場の水を入れ替える。
⑶出穂後に倒伏した場合は、排水し、稲を引き起こして穂を乾かす。
収穫に向けての落水の開始時期は収穫予定日の1週間程度前が目安です。これより早く落水すると、白未熟粒の増加や玄米不足、胴割れ粒の増加により、収量、品質、食味が低下します。
登熟期の病害虫は、玄米の収量や品質に大きな影響を与えます。各病害虫について、病害虫防除所の予察情報(https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/75/125504.html)の確認や、直接ほ場を観察することで、発生状況を確認し、適切な防除を実施してください。
以下に、登熟期の主要な病害虫を紹介していきます。
梅雨の時期に日本へと飛来し、イネの株元に寄生します。防除を怠ると、水田内での世代交代を経て莫大(ばくだい)な量まで増殖し、その吸汁害により登熟不良や坪枯れが発生します。被害を防ぐためには、適切な箱剤の施用に加え、本田での適期防除が重要となります。本年は9月以降も気温が平年より高く、本種の発生に好適な条件となりそうです。ほ場の発生状況に注意し、要防除水準(8月中~下旬:10頭/10株、収穫30日前:30頭/10株)を超えたほ場では防除を行ってください。
出穂後の吸汁により、等級低下の原因となる「斑点米」を発生させます。畦畔(けいはん)のイネ科雑草で発生し、イネが出穂すると加害します。そのため、出穂の10~20日前までに水田付近の除草をしっかり行うことで発生を抑制できます。防除適期は穂揃い期とその7~10日後(乳熟期)ですが、登熟期の発生状況を観察し、必要に応じて追加の防除を実施してください。
イネいもち病は糸状菌による病害で、イネの葉や穂に発生します。葉に発生するものを「葉いもち」、穂に発生するものを「穂いもち」と呼び、「穂いもち」が発生すると、もみに実が入らず、大きな減収の要因となります。いもち病は、イネ栽培のいずれの時期にも発生し、気温が20~25℃、降雨等でイネの葉が濡れている場合が感染しやすい条件となります。穂いもちに対しては出穂前の予防防除を基本に、多発する場合は追加の防除を実施してください。
紋枯病は、イネの表面や葉しょうに菌核(病原菌の菌糸の塊)を作り、多発すると減収や品質低下の原因となります。また、秋に作られた菌核は、水田内に落ちて越冬し、翌年の発生源となります。紋枯病菌は高温多湿を好み、近年の気温上昇の影響で、発生の増加が懸念されている病害の一つです。多湿を防ぐため、過度な密植や窒素肥料の過剰施肥を避け、薬剤防除の徹底を心掛けましょう。本田防除は出穂1~2週間前に行うと効果的です。出穂後に病徴の進展が認められる場合は追加の防除を実施してください。
最後に最も重要といえるのが適期の刈取です。どれだけ丁寧に栽培し良質な米を作っても、刈取適期を逃すと品質が低下してしまいます。油断大敵!適期刈取について確認しましょう!
近年は高温により刈取適期が早まる傾向にあります。そのため、油断すると適期より遅く刈り取ることになりかねません。収穫が遅れると、胴割れや茶米などが発生し、品質が低下します。
イネの刈取適期は、籾(もみ)の黄化率(緑色が抜けた籾の割合)が80~85%になったタイミングです。また、刈取適期が近付いていることを知るための目安として、出穂期からの積算温度も活用できます。「くまさんの輝き」は930℃~1110℃、「ヒノヒカリ」は990℃~1110℃を目安としていますが、これに縛られず、目視による刈取適期の判断を基本としましょう。
近年の気象下では収穫期が暑いことも多く、収穫物の取り扱いにも注意が必要です。
(1)収穫後は速やかに乾燥機へ
生籾の長時間放置による蒸れは食味低下の原因となります。収穫後は速やかに乾燥作業を始めるようにしましょう。やむを得ず一時貯留する必要がある場合は、日差しを避け、できるだけ気温が低く風通しの良い場所に置きましょう。
(2)できるだけ穏やかな乾燥を
高温乾燥や急激な乾燥は胴割れを誘発し、食味を低下させます。温度設定が可能な乾燥機は40℃以下で乾燥、自動調節の乾燥機は時間当たりの水分減少速度が穏やかになるようにしましょう。
(3)玄米水分14.5%を目安に乾燥を
玄米水分が14~15%の範囲が食味に最適と言われます。高水分の場合は保存時にカビが発生する恐れがあり、一方で低水分の場合は胴割れしやすいなどのリスクが伴います。
「気象災害に強いイネづくり」のポイントをシリーズ(①から⑤)で紹介してきました。これらを実践してきた皆さん!これまでの努力を無駄にせず、上質でおいしいお米を皆さんや消費者の食卓に届けるためにも、今回紹介したポイントを踏まえ、良い米づくりをやり遂げましょう!
県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課
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