シリーズ/気象災害に強いイネづくり ③田植え後から中干しまでの管理
はじめに
米を栽培する時期は、近年の地球温暖化の影響もあり、大型台風や豪雨等による被害が多く発生している状況にあります。毎年のように発生する気象災害から、収量や品質の低下の影響は見られていませんか?水稲の基本中の基本を見直してみて、一緒に気象災害に立ち向かいませんか?
今回は、田植え後から中干しまでの水管理を解説します。
各生育ステージごとの水管理
①移植直後~活着期: 🔲 3~4㎝程度の深水管理
移植直後は、作業時の断根や弱った苗を脱水から守るため、深水管理を行いましょう。早期作や早植え栽培においては、保温効果もあります。深水による苗痛みを防ぎ、活着を促すことでその後のスムーズな生育につながります。ただし、スクミリンゴガイ多発田では浅水管理とします。
⓶活着後~分げつ期: 🔲 活着後は2~3㎝の浅水管理 🔲 ガスが発生する場合は、定期的な間断かん水(2日湛水(たんすい)→3日落水等)
移植した苗は、概ね1週間程度で活着します。活着後は、水温向上を図るとともに徒長を防ぎ、分げつを促すため、浅水管理を行いましょう。この管理で徒長による弱々しい稲体を防ぎ、気象災害に負けないがっしりした体を作ります。
湛水状態が続く場合に、ガスの発生により根が痛み、稲体の弱体化を招くこともあります。ガスの発生を確認した場合には、間断かん水を実施して、定期的に水を入れ替え、根元からも新鮮な空気を吸ってもらいましょう。
※除草剤散布時: 🔲 湛水(深水)を維持
除草剤は水面に処理層を作り、処理層に触れた雑草を枯らします。処理層を壊さないよう、散布後7日間は湛水状態を保つようにすることが、除草剤の効果を高めるうえで最も重要です。
③中干し: 🔲 足跡が浅くつく程度、田面の亀裂内に水がない程度
中干しの効果は多岐にわたり、最も重要な水管理技術といっても過言ではありません。
「稲にストレスを与え、穂にならない弱い茎をつくることを防ぎ、倒伏に強い草姿にする」、「田面に入った亀裂が根への酸素供給ルートを確保し、健全な根を多く、長く保たせる」、「機械収穫に必要な丈夫な土壌状態を作っておくことで、収穫前の落水を遅らせ、粒の充実期間を長くとる」など、強いイネとおいしいお米をつくるには必ず必要な管理です。
中干しの開始時期は分げつ数が有効茎(目標穂数)に近づいた時期が適切です(例:栽植密度50株/坪の場合、「ヒノヒカリ」では約20本/株、「くまさんの輝き」では約22本/株)。田面に亀裂が入り(写真1)、浅く足跡がつく程度の固さ(写真2)が適正な中干しです。中干し期間は5~7日間を目安に行ってください。5日以内に田面が乾いても、走り水で5日程度は中干しを継続し、穂を作るステージへの移行を促してください。一方で、亀裂が深く、表層が乾きはがれている状態(写真3)は干しすぎです。断根により根の再生・回復にエネルギーが使われてしまうため、すぐに水を入れてください。長雨により中干しが不十分な場合には、田面が固まり、地表にヒビが入る程度(写真1)まで中干し期間を延長する必要があります。この場合、延長が可能なのは出穂20日前頃までです。幼穂長2~3mmを目安に、中干しを終了させましょう。
④中干し後: 🔲 定期的な間断かん水(3日湛水→2日落水等)
中干し後~穂ばらみ期は、イネに最も水が必要とされる「出穂期」に備え、十分に水を吸収
できる体づくりの時期です。中干し後の透水性のよい水田を利用し、土中に水と酸素を与え、さらに根の伸長を促しましょう。根を張らせることで、台風の風にも耐えられる土台をつくります。湛水状態から自然減水し、完全な落水状態を1日保つ(1サイクル4~5日)管理が標準的です。落水が遅いほ場は湛水2~3日+強制落水2日を繰り返してください。
台風が接近してきたら…
🔲 台風接近前から深めの湛水(5㎝目安、でもできるだけ深く)
🔲 台風通過後2日程度も湛水
深水にすることで水が稲体を支え、倒伏軽減効果が見込めます。ほ場条件に応じて可能な限り深くためましょう。台風通過前後のフェーン現象(高温の乾燥風)による脱水症状の軽減にも効果的です。風の影響による急激な脱水を防ぎ、稲を回復させてください。
※例外
(1)冠水した場合は、排水を行う。
(2)塩害・潮風害の場合は、速やかにほ場の水を入れ替える。
(3)出穂後に倒伏した場合は、排水し、稲を引き起こして穂を乾かす。
最後に
水管理はコストに左右されず、だれでも取り組める技術です。今回紹介した技術に可能な限り取り組んでいただき、丈夫なイネから美味しいお米をたくさん収穫しましょう!
県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課
気象災害に強いイネづくり ③田植え後から中干しまでの管理 (PDFファイル)
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