平坦地水稲の管理について(移植とその後の管理) ヒノヒカリ・森のくまさん

はじめに

本格的に田植えのシーズンが始まりましたが、ほ場の準備は万全でしょうか?
水稲は「苗半作」と言われるように、苗つくりが重要です。しかし、せっかく育てた苗もその後の管理不足で生育不良になってしまっては元も子もありません。
そこで、今回は平坦地水稲のほ場準備から移植、初期の水管理までのポイントを項目別にお伝えします。

ほ場準備

①堆肥
堆肥の施用量は1~2t/10aです。未熟堆肥を施用すると微生物がより活発に働き窒素成分を吸収利用することで、水稲に必要な窒素成分が不足し、生育が阻害される原因となるため、必ず完熟堆肥を施用するようにしましょう。
また、堆肥の塊をなくし、均一に施用しましょう。写真1は堆肥を1t/10a、2t/10aで散布した時の1㎡の状態を示しています。広いほ場ほど、あらかじめ散布量に応じた見た目を知っておくと散布量の調整の目安となります。
②基肥
基肥は窒素成分で4~5㎏(基肥一発の場合は6~7㎏)を基本に、地力や前作に応じて加減してください。
窒素を施用しすぎると玄米中のタンパク質含有率が増加し、食味低下に繋がります。また、いもち病の発生も助長されるため、多肥になりすぎないよう留意しましょう。
③代かき
代かき作業では、田植えの5~6日前に水深の浅い所と深い所ができないよう均平作業を行います。代かきを丁寧に行うことで移植後の水管理が楽になりますが、かきすぎると土壌の透水性が低下し、生育に悪影響を及ぼすため注意しましょう。

写真1.1t/10a、2t/10aの散布量の目安

移植

①適期移植
葉齢、苗丈が適当な大きさになったら(稚苗の場合、葉齢2.0~2.5L、苗丈10~13㎝中苗の場合、葉齢3.0~4.0L、苗丈15~20㎝)、速やかに移植しましょう。適期に移植すると、活着が良くなり、初期生育も順調に進みます。老化苗になればなるほど、活着不良や病害が出やすくなりますので、移植適期を逃さないようにしましょう。
移植時期は平坦地域の一般的な移植時期(普通期栽培で6月中~下旬)に行いましょう。
また、箱処理剤を施用する場合は移植の直前ではなく、移植の2日前には施用するのが効果をきちんと発揮させるポイントです。
②栽植密度
極端な疎植および密植は品質の低下やトビイロウンカの被害を助長する可能性があるため避けましょう。
栽植密度は18株/㎡(60株/坪)程度、植込み本数は3~4本/株を目安とします。写真2は1株あたり3本移植した時の様子です。植込み本数が多いと、茎数が多くなりすぎることで分げつしなくなり、かえって収量の低下を招きます。
③植付深度
深植えすると活着・発根を妨げたり、スクミリンゴガイの食害を受けやすくなります。また、分げつの発生も抑制されるため、3㎝程度の浅植えを心掛けましょう

写真2.1株あたり3本植えの目安

水管理

水管理の徹底は稲の健全な生育に大きく影響します。生育時期にあわせた水管理を行うことが収量・品質・食味の向上につながります。

① 移植直後~活着期
移植後はかきとりによる断根のため、稲体が弱っている状態です。水深を3~4㎝のやや深水にして蒸散を抑えるとともに水の保温効果による活着を促しましょう。
また、除草剤散布後は除草剤の処理層をしっかり作るためにも田面が露出しないようにし、3~5日のたん水が必要です。除草剤の散布は決められた使用時期を逃すと効果は大きく低下してしまうので気を付けましょう。
② 活着後~分げつ期
根の生育は活着後から始まり、分げつとともに活発になり、幼穂形成期ごろに最大となります。この時期以降になると新根の発生は見られません。そのため、幼穂形成期までに根張りを良くしておく必要があります。
そのため活着後は水深を2~3㎝とし浅水管理を行い、水温を上げることで発根を促進します。
また、たん水状態が続くと、有機物の分解が進むことにより土壌還元状態となり、根が還元障害(酸素不足による根痛み)を受け、活着不良による分げつ不足の原因になることがあります。葉が赤くなったり、穂の奇形が出てきたりすることもあります。このような悪影響は気温や水温が高いほど、また、透水性が悪く排水不良の水田ほど著しくなります。
そのため、除草剤散布後のたん水期間が過ぎたら、溝切りをし、間断かん水(2日たん水、3日落水など)を行い、定期的な水の入れ替えをしましょう。
③ 中干し
有効茎数が確保できたら、過剰分げつを防ぎ、根張りを良くするため、中干しを行います。
ヒノヒカリでは茎数が20本/株程度確保できたら中干し開始の時期です。
ただし、根を痛める恐れがあるため、過度な中干しは避け、田面に小さなヒビが入り、軽く足跡がつく程度を目安として行いましょう。中干し後、一度に大量に入水すると根の生理を害するため、徐々に入水するよう注意します。

県央広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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