2023年のエリア普及現地情報

2023年12月

現地検討会の様子
収量の推移

酒米の収量が過去最高を記録!

中山間地域である津奈木町倉谷(クラタニ)・古中尾(フルナカオ)地区では、酒米を高単価作物と位置づけ、「山田錦」1.5haを栽培し、地元酒造会社の亀萬酒造へ販売されています。
一方、「山田錦」は長稈で倒伏しやすい品種のため、生産面において収穫時の労力や収量等の問題が生じていました。
このため、令和3年度から当課では、耕種基準の策定や現地検討会等を開催するなど、倒伏軽減に向けた伴走型の指導を行い、生産者の意識や技術(適正な肥培管理や水管理の徹底等)の向上を図ってきました。
この結果、今年産の平均収量は393kg/10aとなり、目標としていた360kg/10aを上回り、過去最高を記録しました。いずれのほ場もなびく程度の倒伏に抑えられ、収穫したオペレータからも、「以前より収穫しやすい、これなら問題ない。」と太鼓判を頂くことができました。
今後も、酒米の安定栽培だけでなく、面積拡大を目指し、新規作付者・オペレータの確保等も支援していきます。

2023年11月

室内研修会における質疑応答の様子
果樹園における柵の説明

鳥獣被害に強い地域へ!高校と連携し研修会を開催

芦北地域では、鳥獣による農林業への被害が年々増加傾向にあり、被害軽減対策の取組みが喫緊の課題となっています。
そこで本年6月に、地域の関係7団体で構成する連絡協議会(以下、協議会)を立ち上げ、一丸となって被害軽減対策に取り組んでいます。その活動のキックオフとなる地域全体の研修会を、9月13日に芦北高校において開催し、110名を超える参加がありました。
(株)イノPの稲葉氏から「地域と畑は自分たちで守る」と題して、鳥獣害対策の基本的な考え方について講義をいただきました。その後、芦北高校の果樹園で取り入れている金網柵を前に、効果的な対策について説明をいただきました。
参加者は熱心に聞き入り、質疑の挙手が次々と上がりました。またアンケートでは参加者全員が「役に立つ内容だった」と回答するなど、大変意義深い研修会となりました。
鳥獣対策の基本的な考え方をより多くの方に広めるため、協議会の構成員が講師となって管内の地区ごとに講習会を開催するなど、点を線にする取組みを展開し、鳥獣被害に強い地域づくりを進めていきます。

2023年11月

個別指導の様子
個別指導の様子

カキ「太秋」低樹高ジョイント仕立て栽培の安定生産に向けた濃密指導を実施

芦北地域では、カキ「太秋」の生産が盛んであり、省力・軽労化が図れる低樹高ジョイント仕立て栽培(以下、ジョイント栽培)を県内でいち早く導入しました。現在、JAあしきた柿部会員52戸のうち12戸の農家がジョイント栽培に取組んでいます。
部会で積極的に取組んでいるものの、新しい技術ということもあり、一部の農家において収量が不安定な状況にあります。
そこで当課では、JA指導員と連携し安定生産のための濃密指導を行いました。まず、7月にジョイント栽培の全園巡回を実施し、実態を把握したうえで農家5戸を選出しました。9月27日に先行して3戸の農家に管理方法を聞き取り、園地状況に応じた管理方法を実演を交え1農家あたり1時間超の指導を実施しました。
農家からは、「園地の問題と課題が良く分かり、今後の適正な管理方法について自身で考えることができた。」「今後もせん定時期など、定期的に個別指導を受け安定生産につなげたい」など、栽培管理への意欲向上が見られました。
当課では、今後もせん定や接ぎ木など、安定生産のための重要な管理時期に個別指導を実施し、産地の栽培技術の高位平準化を図ります。

2023年11月

樹園地での研修風景
茶園での研修風景

担い手組織合同研修会を初開催

芦北地方は近年、県内外からの新規就農者が増加しています。今回、新規就農者等で組織する「せしかう会」※、篤農家の組織である「同友会」、青年農業者の「4HC」が合同で農業技術の習得や農家間のネットワークをさらに深めることを目的とした合同研修会が初めて開催され、各組織から合わせて20名が参加しました。
篤農家の柑橘圃場2箇所と茶園1箇所を視察し、活発な意見交換が行われました。参加者からは「面識がない人とじっくり話せて、今後のつながりができた。」「高度な技術を具体的に教えてもらった。」、「今後も継続してほしい。」等好評な意見が多く出されました。
当課では、今後も各組織間の交流が活発化するための活動を重点的に支援していきます。

※新規就農者及び参入希望者で農業生産技術と所得向上及び農村生活の不安解消を目的とし令和4年に設立された任意組織

2023年10月

吉野果実選果場(氷川町)の研修の様子
(株)アグリ日奈久(八代市)の研修の様子

4年ぶりに開催。城南5地域の「城南ブッロク農業経営同友会研修会」

9月1日(金)に「城南ブロック農業経営同友会研修会」を4年ぶりに開催しました。
この研修会は八代、芦北、球磨、宇城、天草の5地域の県農業コンクール大会参加者や指導農業士で構成された地域農業経営同友会が連携して毎年開催されていましたが、コロナ感染症の影響により開催が延期されていたため、今回は4年ぶりとなりました。
本年度は八代地域での開催となり、当日は65名が参加し、輸出20年を迎える吉野梨の選果場と令和3年度に秀賞を受賞した地域営農法人(株)アグリ日奈久の現地研修を行いましました。その後の交流会では、各地域の会長から地域の現状や活動状況の報告等があり、盛会な研修会となりました。
参加者からは「隣の地域なのに今日初めて知ったことがあった」、「近い地域だからこそわかり合える」など研修会に参加して良かったとの声が聞かれました。来年度は球磨地域が担当で、皆さん楽しみにしている様子でした。

2023年8月

講習会の様子
大関米ほ場(芦北町大野)

気象災害に負けない米作りを!水稲講習会を開催

芦北地域で最も標高の高い「大関山(おおぜきやま)」の山麓では、地域ブランド米である「大関(おおぜき)米(まい)」が栽培されています。生産者は、標高150m以上の山間地という指定地域内で減農薬・無化学肥料で栽培に取り組み、安心・安全な米づくりが行われています。一方で、昨年度は水管理が不徹底なほ場を中心に、台風等による品質低下が問題となりました。
そこで、水管理で最も重要である中干し※1開始前の7月19日、JAあしきたと協力し、大関米が作付けされている芦北町大野、水俣市越小場の2か所で水稲栽培講習会を開催しました。
特に、昨年の青枯れ症状※2の発生に触れ、水管理の徹底で台風などの気象災害への対策ができることを強調。また、水稲の重要害虫であるトビイロウンカやいもち病の発生状況・対策について注意を促しました。生産者からは「中干しの時期を迷っていたが説明を聞いて確認できた」という声が聞かれました。
今後も当課では、水稲の収量・品質・食味向上に向けた栽培技術指導・支援を行っていきます。

※1…中干し:稲を健全に保つため、田んぼの水を一時的に抜いてヒビが入るまで土を乾かす作業
※2…青枯れ症状:出穂後20~30日頃に、強風・乾燥等の象条件に遭遇し、生葉が青いまま萎れる症状

2023年8月

新規栽培者への重点巡回指導
優良農家による新規栽培者への出荷調整の実演指導

ホオズキ出荷最盛期

芦北地域では、約1haのハウスで観賞用ホオズキが栽培されており、現在、8月のお盆に向けた出荷が最盛期を迎えています。
昨年度、ハダニ類やアザミウマ類等の微小害虫の発生が多く、上手く防除対策ができていない生産者が散見されました。このため、農業普及・振興課では新たに防除暦を作成し、適期防除を促すとともに、微小害虫対策資材を導入した実証展示を行っています。
また、園芸作物に初めて挑戦する新規栽培者に対しては、重点的にほ場を巡回して、基本的なことから丁寧に栽培指導を行っています。さらに、視察研修や検討会等を企画し、参加を促して優良農家とのつながりを作る機会を増やしています。これらの取組みにより、本作では前年より生育状況が向上し、出荷本数の増加が見込まれています。
ホオズキ栽培では、出荷終了と同時に次年度用の実生採取、育苗が始まります。当課では、次作の収量・品質がより向上するよう、継続して支援を行っていきます。

2023年8月

意見交換会の様子
意見交換会の様子

農業への熱い思いを!芦北4HCが九州農政局と意見交換

芦北地方青年農業者クラブ連絡協議会(芦北4HC)は、新規クラブ員の加入もあり、農業所得の向上や、地域貢献への意識が高まってきています。
このような中で、クラブ員が知識を取得するための新たな取組みとして、7月5日に芦北地域振興局で芦北4HCと九州農政局員との意見交換会を開催しました。
今回は、4HCから地域やクラブ員の現状や課題、九州農政局から“みどりの食料システム戦略”や、スマート農業についての説明を受けた後に、意見交換を実施し、様々な意見が出されました。参加したクラブ員からは、「九州農政局からの貴重なアドバイスで、4HCメンバーの農業への思いを再確認でき、農業へのモチベーションが上がった」などの意見がありました。
意見交換会は、今後も2回程度予定しており、当課では、今回の取組みを基に、九州農政局と議題を選定し、次回に向けて支援を継続します。

2023年8月

自己紹介の様子
園地視察の様子

将来の後輩を作る!4HCが芦北高校生と交流会を開催

芦北地方青年農業者クラブ連絡協議会(4HC)は、今年度の活動スローガン“地域に貢献!芦北4HC!”を掲げ、活動に力を入れています。
このような中で、地域の農業の担い手を確保するための新たな取り組みとして、7月19日に、芦北高校農業科の生徒と4HCとの交流会を開催し、農業に興味がある5名の生徒の参加がありました。
交流会では、4HC員の加温施設デコポン「聖秀」のほ場にて、4HC員から経歴や就農の実体験による農業の魅力について紹介がありました。
生徒からは、「摘果後の果実がもったいないと感じた。肥料に変えられないか。」「SNSを活用してファンを増やし販売すると高単価で売れるのではないか。」といった様々な質問や意見があり、活発な意見交換が行われました。
また、交流会後のアンケート結果から、農業や4HCに対するイメージが向上したという意見が寄せられ、交流会の開催が「将来の後輩作り」につながる手ごたえが感じられたところです。
当課では、今後も4HCのより良い地域貢献のための活動を支援します。

2023年8月

せしかう会顧問(座学講師)が果樹園地で説明

新規就農の仲間とともに園地巡りで栽培管理状況を共有

水俣・芦北地域では、新規就農者及び参入希望者で農業生産技術と所得向上及び農村生活の不安解消を目的とした任意組織「せしかう会」を昨年から結成しました。
7月25日に、互いの果樹園地を巡って摘果状況や管理状況の情報を共有する「果樹園地見学会及び技術交換会」を実施しました。会員、JA指導員、農業普及・振興課、会の顧問の座学講座講師計18名で10か所の果樹園地を巡りました。その中には管内でも優良な栽培をしている先輩農家の3園が含まれます。
園地では、園地面積、品種(樹齢も含めて)をはじめ現在の栽培管理状況を園主が説明し、会員間での情報及び意見交換をしてJA、普及・振興課職員が栽培管理の助言指導を行いました。
今回は、摘果が適正に実施しているかなどでしたが、11月上旬に収穫前の確認も含めて同じように園地巡りをして、引き続き新規就農者の栽培管理技術向上を図っていきます。

2023年8月

濃密指導!三番茶に向けた講習会を開催

芦北・水俣地域では5月下旬から二番茶がスタートし、1か月半後の7月上旬からは三番茶の摘採が始まります。
二番茶終了直後から作業に取り掛かれるよう、二番茶の製造が後半戦となった6月13日に、二番茶後の栽培管理について講習会を開催しました。
少人数での講習会であったため、枝条更新※や、施肥の工夫、農作業事故防止等の説明を行いながら、随時、質問を受け付けるなど、会話を交えながら進めていきました。講習会後、生産者からは「肥料のコストを抑えて効果的に施用するポイントが分かった。」、「今年の製造中に農作業事故になりそうな場面を振り返ることができた。」といった声が聞かれました。これを受けて、肥料の吸収効率が良い液肥の展示ほの設置や、現地検討会での工場の危険箇所点検を提案し、実施することとなりました。講習会の内容を実際に取り組んでもらい、コストを削減した高品質なお茶づくりや、事故のない作業環境づくりつなげたいと考えています。
今後も当課では、高品質な茶生産に向けた支援を行っていきます。

2023年8月

総会で挨拶する白濱会長
昨年度農業コンクール受賞者の方々

芦北地方同友会総会・農コン受賞者祝賀会を開催!

6月9日、芦北地方農業経営改善同友会総会・農業コンクール受賞者祝賀会が開催されました。令和2,3年度はコロナ禍により書面決議で祝賀会は開催できず、昨年度から参集しての開催が可能となりました。今年度の総会は会員19名が参加しました。続いて開催された祝賀会では配偶者を含めて23名の会員と昨年度農業コンクール受賞者3名が参加し、各受賞者の経営活動状況を事務局である本課から紹介の後、花束贈呈、白濱会長から同友会の紹介と案内がありました。今年度会員数は、令和元年度から3年度までの農業コンクール受賞者が新たに7名加わり36名となりました。
今後の活動としては、9月に城南ブロック農業経営同友会研修会(八代地域)と管内先進事例研修会、11月に経営研修会の計3回の研修会を計画しています。その中で、昨年度農業コンクール受賞者の経営活動状況を現地で学ぶ管内先進事例研修会では、地域4Hクラブやせしかう会(新規参入就農者の任意組織)と初めての合同研修会を計画しており、コロナ禍で十分できなかった農業者間のネットワークを密にして芦北地域全体の農業技術レベル向上を行っていきます。
当課では、引続き芦北農業をけん引する本会と連携し支援を行っていきます。

2023年8月

締結式の様子
移植作業の様子

県南初!亀萬酒造が酒米づくりで農業参入!

津奈木町で日本最南端の天然醸造元として日本酒を醸造する亀萬酒造は、平成29年から地元生産者の協力を得て、原料である酒米「山田錦」の生産にチャレンジしてきました。生産開始から6年の月日を経て、安定生産できる可能性が高くなったことから、令和5年5月30日に農業へ参入されました。酒米生産を目的とした企業の農業参入は県南地域では初めての事例となります。
6月12日には、農業参入に伴い、津奈木町との地域調和等に関する協定式が芦北地域振興局の立会のもと行われました。
6月19日には、借り入れた35aの農地で移植が行われました。7月と9月には現地検討会を開催し、技術の向上のみならず酒米生産者の確保にもつなげる契機とし、自社生産を含めた地元産酒米の拡大を目指しています。
当課では、「山田錦」の栽培上の課題である倒伏軽減のため、実証ほの設置や耕種基準の策定等により、酒米生産者へ安定栽培や作付面積拡大の支援を行ってきましたが、今後も、酒米の栽培支援や補助事業を活用した機械の導入支援等により、新たな担い手となる亀萬酒造の営農を支援していきます。

2023年7月

倒伏軽減を目指して!酒米講習会を開催

中山間地域である津奈木町倉谷(クラタニ)・古中尾(フルナカオ)地区では、酒米を高単価作物と位置づけ、「山田錦」1.5haを栽培し、地元酒造会社の亀萬酒造へ販売されています。一方、「山田錦」は長稈で倒伏しやすい品種のため、生産面において収穫時の労力が問題となっていました。
 そこで、播種前の4月28日に栽培講習会を行うとともに、亀萬酒造の酒蔵見学会を企画・開催しました。生産者からは、基肥の適正量や中干しの時期等、多くの質問があり、倒伏を軽減させ収量を増加しようという意欲が見受けられました。また、生産した酒米が日本酒に醸造される過程を知ることにより、より高品質な酒米を生産しようと生産者の士気を高めることができたと思います。
 さらに、5月8日に実証ほの設置について亀萬酒造と打合せを行い、適正な土壌改良材を把握するための実証ほを5月下旬に設置しました。今後も関係機関と連携し、酒米の安定生産や作付面積の拡大を支援していきます。

2023年7月

設立総会時の様子
シカ被害園における対策の検討

一致団結!鳥獣被害軽減に向けて連絡協議会を設立

芦北地域では、鳥獣による農林業への被害が年々増加傾向にあり、被害軽減対策の広域的な取組みが喫緊の課題となっています。
そこで振興局、市町、農業協同組合、森林組合、農業共済組合等の地域の7関係団体が一体となり、「地域ぐるみ」で取組みを推進するため、6月7日に「芦北地域鳥獣被害防止対策広域連絡協議会(以下、協議会)」の設立総会を開催し、全議案が全会一致で承認されました。
県振興局農林部の野間部長から、「協議会は地域における対策の推進エンジンとなるもの、鳥獣被害に強い地域づくりに大きく寄与を」と期待を込めた挨拶がありました。
総会後、県農林水産部むらづくり課も参加のもと、被害園地にて、被害の状況、対策などについて現地検討会も行いました。
今後は関係機関との情報共有をより密にして、対策意識の向上と捕獲や柵の設置など、ソフトとハードの両面から取組みを進めることにより、農林業被害の軽減に努めます。

2023年7月

乗用ピッカーでの収穫
地元小学生へのバレイショ栽培説明

加工用バレイショの産地化に向けて

芦北地域では、令和2年7月豪雨で被災した芦北東部地区の復旧・復興を目的に、令和3年度から、水田裏作に導入可能な品目として加工用バレイショの栽培実証に取り組んでいます。
本年度は、加工用品種「オホーツクチップ」を中心に、管内5か所で植付し、霜の影響、生育、収量、加工適性等について調査するとともに、収穫時期の早進化、機械化一貫体系について検討しています。
5月29日には、芦北町花岡で(株)クボタ協力のもと、茎葉処理機、掘取機、乗用ピッカーを利用した機械収穫の実演、調査を行いました。また、6月2日には、芦北町大尼田で地元の小学生を対象に収穫体験を行い、被災地域の復興の取組みについて学習する機会を作りました。
今後も、機械の導入や他品目を組み合わせた栽培体系での経営モデルの検討など、加工用バレイショの産地化に向けて課題解決に取り組んでいきます。

2023年6月

県内一の早出し茶「みなまた茶」の概況

水俣地域で生産される『みなまた茶』は、温暖な気候で栽培されるため、県内で最も早く一番茶の摘採が始まります。今年は例年より約3日早い4月8日から摘採が始まり(写真1)、5月2日にはほとんどの生産者が終了しました。今年の茶は、冬場の2度の寒波と3月下旬の気温の高さから、生葉の質が例年と異なり加工の調整が難しい年となりました。当課及び農業革新支援センターも製造の技術支援に入って蒸し機の回転数や乾燥機の温度などの設定を微調整することで、生葉の力を引き出した品質の良い茶ができました。
また、産地の中には小売りをされている生産者が自身の商品の得意客を全国から招いて手摘みの茶園を管理したり(写真2)、昨年度、県の事業で萎凋機(写真3)を導入した生産者が機械を活用して和紅茶やウーロン茶の商品開発を行ったりと、生産者ごとに特色のある活動にも取組まれています。
当課では5月下旬から始まる二番茶以降も、品質の良い茶を製造できるよう、栽培と製造の技術支援を行っていきます。
蒸し製玉緑茶、煎茶、釜炒り茶、紅茶(みなまた和紅茶)、烏龍茶といったバリエーション豊かな芦北・水俣の茶をぜひ味わってみてください。

2023年6月

新規就農者の果樹園の見学と園主(右側奥)との懇談

新規就農者支援のプロジェクト始動

水俣・芦北地域では当課を事務局に市町、JA等で構成する「新たな担い手確保対策プロジェクトチーム」(以下PT)を設置し、当地域の主要品目である「果樹」の就農支援を実践しています。
PTでは、毎月会議を開催し、担い手や農地、住居の情報を共有しており、就農相談から就農園地での研修へとつなぎ、就農まで一貫した対応を行っております。
4月11日には、神奈県から当地域へ移住して就農準備型研修を希望されている方に新規就農者の園地を案内し、就農者から実際に研修時の苦労や経営開始までに必要なこと等を直に聞く機会を設けました。
細やかに且つ綿密に関係機関と携携を重ねながら、就農希望者が安心して当地域で研修、就農していただけるよう引き続き支援を行っていきます。

2023年4月

植付け中の様子
植付け中の様子

県内初の育成茶新品種「熊本TC01(くまもとティ-シ-ゼロイチ)」を定植しました

県内初の育成茶品種である「熊本TC01」は農業研究センター茶業研究所(以下、茶業研究所)が育種を行った品種で、令和4年に品種登録出願されました。令和5年から、現場への普及が始まり、芦北、球磨、上益城地域で定植が行われています。芦北地域では3月8日から定植が始まり、2戸で合わせて約30aを植付けました。苗は順調に活着しており、新しい芽が出てきている状況です。
当課では「熊本TC01」の普及にあたって、令和3年度から茶業研究所等と連携して品種検討会を開催しています。管内生産者を対象に茶業研究所の研究員から栽培の説明を受け、従来品種との飲み比べを行い、品種の特徴を体験してもらいました。また苗の受け渡し時や定植時には、栽培方法の現地指導や、県外へ流出しないよう種苗法の説明を行っています。
販売開始は令和10年頃を予定しており、定植した生産者は、緑茶への加工のほか、みなまた和紅茶の製造技術を生かした、発酵茶への可能性も検討されています。今後も引き続き生産技術や流通、加工等の総合的な支援を行っていきます。

2023年3月

資料 発行した耕種基準

酒米における栽培技術の高位平準化を目指して

中山間地域である津奈木町倉谷・古中尾地区では、酒米を高単価作物と位置づけ、「山田錦」約1haを栽培し、地元酒造会社の亀萬酒造へ販売されています。一方、生産面では、「山田錦」は長稈で倒伏しやすい品種のうえ、栽培基準等もなかったため、倒伏しにくい栽培方法の確立や栽培技術の高位平準化が課題となっていました。
そこで、倒伏軽減に向けた栽培法を把握するため、施肥体系や栽植密度等の実証ほを設置し、その結果や他地域の基準、試験研究の情報等を参考に耕種基準を発行しました。耕種基準には、時期ごとの作業内容だけでなく、水管理の徹底及び土壌改良材の施用といった栽培のポイントや「山田錦」の特性等も掲載しました。配布した生産者からは「次作の参考にしようと思う」「面積拡大ができる」といった声が聞かれました。
今後、耕種基準に沿った栽培管理の徹底を図り、酒米の安定栽培を支援していきます。

2023年3月

茶園の視察
意見交換

茶の先進地視察研修in相良村 川上製茶

芦北・水俣地域の茶業は、緑茶をはじめ紅茶等の商品を生産しており、販売面も経済連入札や小売販売で県内外に広まっているところです。一方で、担い手不足や茶価の低迷などの課題も発生しており、それらの対策の参考とするため視察研修を2月28日に管内茶関係者を対象に、相良村の川上製茶で茶の先進地視察研修を行いました。
相良村を含む球磨地域は県内でも主力の茶産地で、県内の茶生産量の約4割を占める程です。最近ではドリンク茶への移行が進んでいます。そのような中、川上製茶ではリーフ茶での販売を基本に、有機JAS認証及びJGAP認証の取得、萎凋香緑茶や紅茶の製造、全園へのスプリンクラー導入や販売時のメッセージカード同封等、多くの取組みをされていました。参加した生産者からは、有機栽培に切り替える際の注意点や収量の変化等を詳しく聞かれました。
また、水俣市、雇用創造協議会、ティーソムリエを招いたことで、販売促進に向けた意見交換の場ともなりました。
4月からは茶の摘採も始まり新たな茶シーズンを迎えます。品質の良い茶の生産や、茶の消費拡大の一助となるよう、今後も当課では活動を継続していきます。

2023年3月

指導の様子
温度管理を改善した生産者の デコポン合格率(R3→R4)

データに基づく管理指導で加温デコポン合格率向上

芦北地域は、県内で最も加温デコポンの栽培が盛んです。加温デコポンはお歳暮商材として高単価で取引されますが、燃油等経費が掛かることから、所得向上にはデコポン(※)の合格率を高める必要があります。
当課では、令和3年度に高品質果実生産に係る生産要因を調査し、「5月~7月までの最低温度管理を22~24℃に維持すること」が酸濃度の低下につながり、「9月以降の適切な水分管理」が糖度を高める重要な管理であることを明らかにしました。
そこで、令和4年度は過去合格率が低い生産者を5名選出し、重要な管理のポイントをチェックする改善指導を行いました。施設内温度の見える化、定期的な果実調査による水分管理指導を随時行った結果、最低温度を基準に則した温度管理で実行した生産者は、合格率が31%向上(合格率76%)しました。
今後も加温デコポン生産者の高位平準化を目指し、生産者個々のレベルアップ(技術改善)が図れる指導体制づくりに取り組んでいきます。

※デコポン:不知火類で高品質基準を満たした果実(JA果実連 登録商標)

2023年3月

作成した出展ブースツール

担い手確保に向けた新たな取組

当課が事務局を務める芦北地方農業振興協議会では、果樹の新規参入者を確保するため、相談から研修、就農・定着まで様々な支援を行っています。
令和4年度は、これまでの活動に加えて新たに①オンライン就農相談、②就農フェア出展ブースツールの作成、③就農支援策PR動画の作成等に取り組みました。
オンライン就農相談の実施により、遠方在住の就農希望者でも気軽に相談しやすい環境を整備できました。また、芦北地域の柑橘の就農支援策が一目で分かるようブースツールを作成し、就農フェアへ出展時の参加者への効果的なPRにつながっています。さらに、就農支援策PR動画は、新規就農者のインタビュー等を通して当地域の就農支援策のアピールや就農後の生活がイメージできる内容となっており、協議会HPでの掲載及び産地見学会時に活用する予定です。
このような取組の結果、今年度の相談者数は64名と昨年度の3倍となり、令和5年度の長期研修受講者は過去最高の5名を確保できました。令和6年度の長期研修受講希望者も既に4名おり、担い手確保が順調に進んでいます。
当課では、今後も関係機関と連携し、担い手確保と併せて長期研修受講者や新規就農者への支援も重点的に行い、担い手育成及び地域への定着を図っていきます。

2023年3月

講義の様子

芦北高校にてお茶講座を開催

1月19日(木)に県立芦北高等学校の農業科1年生21人を対象に、お茶講座を開催しました。この講座は、お茶の淹れ方体験を通して若い世代にお茶文化になじみを持ってもらうという目的から、芦北地方農業振興協議会(事務局:当課)主催で毎年開催しています。
お茶の淹れ方体験では、管内の茶6種(蒸し製玉緑茶、煎茶、釜炒り茶、焙じ茶、紅茶2種)の中から3種を選んでもらい、急須での淹れ方体験と試飲を行ってもらいました。R2~3年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため講義のみの開催で、淹れ方体験は3年ぶりに実施しました。生徒の皆さんからは「自分で急須を使って茶を淹れるのは初めて」、「2種類の紅茶で全く香りや味が異なる」といった声が聞かれました。
また、講義では、茶の生産や管内の茶農家の紹介、明治時代に水俣地域に伝わった『紅茶第一製法』の説明などを行いました。高校の教科書には茶の記載が少なく、さらに栽培や製造を体験する機会が少ない中、講義という形ではありますが、お茶について生徒の皆さんに伝える良い機会になりました。
現在、若い世代ではお茶の飲み方が簡便化し、ペットボトル茶が普及していますが、今回の講座で急須を使ってゆっくりとお茶を飲むことに興味を持ってもらうことが出来ました。今後も当課では茶の生産支援と併せて、消費拡大に繋げる活動を継続していきます。

2023年3月

タマネギ移植機の検討
バレイショ畝立現地検討会

タマネギ等露地野菜の機械化体系の検討

水俣・芦北地域は、温暖な気候を活かしたサラダタマネギ「サラたまちゃん」の栽培が盛んな産地ですが、販売価格低迷や生産者の高齢化により生産者が年々減少しています。また、令和2年7月豪雨で被災した芦北東部地区では復旧・復興を図るため、水田裏作に導入可能な品目を検討しています。当課では、サラダタマネギの産地維持及び水田裏作での栽培品目として加工用ばれいしょの産地化を進めるため、植付け準備から収穫までの機械化体系について、(株)クボタの協力を得て、JAとともに検討を行っています。
12月27、28日に芦北町宮浦の約1.5haのほ場で、乗用移植機でのタマネギ植付の検討を行いました。また、1月10日の芦北町花岡での加工用ばれいしょ畝立現地検討会では、直進アシスト付きトラクター、施肥機、施薬機、畝立機を使用した実演を行いました。
今後、機械による植付、収穫作業の実演、調査を行い、産地化に向けて収益性を検討するなど課題解決に取り組んでいきます。

2023年2月

出荷反省会の様子
青枯れについて

特別栽培による「くまさんの輝き」の作付推進へ

芦北地域では、付加価値を高めるため、特別栽培による「くまさんの輝き」の生産を推進しています。その一環として、毎年、JAと連携して「くまさんの輝き」生産者を対象とした出荷反省会を開催しています。
今年も12月19日に令和4年産出荷反省会を開催しました。本年産は台風14号の影響で倒伏や青枯れによる白未熟粒が増加したことで、令和3年産と比較して1等比率が低下しました。このため、多くの生産者から青枯れについて質問があり、発生要因を説明し、対策として基本的な水管理の徹底等を指導しました。
また、青枯れ症状の発生要因や対策について農業革新支援センター等に助言をもらいながらまとめた資料を作成し、「くまさんの輝き」生産者だけでなく、JAの広報紙を通じて幅広く情報提供を行いました。
当課では引き続き、収量・品質向上に向けた栽培指導を行うとともに、特別栽培による「くまさんの輝き」の作付推進を図っていきます。

2023年2月

新規就農者との意見交換
JAあしきたマルタ選果場の見学

芦北地方新規就農バスツアーを開催

当課が事務局を務める芦北地方農業振興協議会は、熊本県新規就農支援センターと共催で12月10日に「芦北地方新規就農バスツアー」を開催しました。
募集定員以上の参加申し込みがあり、当日は県内外から10人が参加しました。
バスツアーでは、芦北地域や農業の魅力と実際を感じてもらうために新規就農者との意見交換や果樹園地見学、不知火の収穫体験、選果場の見学などを実施しました。
各見学地では、参加者から積極的に質問があり、「その場で質問ができて勉強になった」、「実際に自分の目で見て様々な気づきがあった」などの感想が聞かれました。今回のバスツアーをきっかけに芦北地域での就農を前提とした研修受講を本格的に検討している方もおり、就農に向けて継続的な支援を行っていきます。
当課では、今後も関係機関と連携し、新たな担い手確保につながる取り組みを進めていきます。

2023年1月

鳥インフルエンザ発生に備えた農場の消毒確認を実施

今年度は鳥インフルエンザの発生が、昨年と比較して10日ほど早く発生し、猛威を振るっている状況にあり、11月2日に知事の消毒命令が発出され、県内の養鶏場に消毒用の石灰配布を行うことが決定しました。これを受け、水俣・芦北地域は鹿児島県の養鶏地帯である出水市と隣接していることから、城南家畜保健衛生所及び管内市町と連携し生産者に石灰を配布し、防疫体制の強化を依頼しました。
出水市の養鶏場では鳥インフルエンザが7例(12月8日現在)発生しており、管内の出水市に隣接する水俣市では防疫の意識が高まっています。
これまで、当課では城南家畜保健衛生所及び熊本県建設業協会芦北支部(以下、芦北支部)と共に管内養鶏場に立ち入り、農場主立ち合いのもと、敷地内の現状確認を行い、万が一発生した場合の現場事務所、埋却地、資材置き場等の具体的な設置場所の情報を共有しています。
当課では、今後も関係機関と連携して、家畜防疫の強化に努めていきます。

2023年1月

加温栽培デコポン着果状況
「聖秀」

令和4年産加温デコポン出荷スタート

芦北地域の基幹品目であるデコポンの選果が11月28日から開始され、12月1日に初売りが行われました。初回の芦北産デコポンは、外観良好で秀品率が高く、好調なスタートを切っています。特に、当地域の加温栽培では紅が濃く、色鮮やかな「聖秀」の導入を推進しており、現在、加温栽培面積のおよそ20%を占め、年々出荷量が増加しています。
当課では、前年度に加温栽培の生産管理において、「3月~7月上旬の最低温度管理」と「秋季の水分管理」がデコポン合格率に影響していることを明らかにしたことから、関係機関と連携し、その実証試験(5カ所)に取組んでいます。特に、10月以降、定期的に果実肥大、品質、土壌水分を確認し、増糖に向けた少水分管理指導を行いました。
今後は、今年産の出荷データを生産者とともに検証し、来年産の管理改善につなげていくとともに、加温栽培の高品質安定生産に向けて重点管理のチェックシートを作成するなど、農家自ら技術改善が行える生産体制づくりに取組んでいきます。

2023年1月

JAあしきたカキ「太秋」果実品評会
低樹高ジョイント仕立て栽培園の収量調査

果実の外観と品質ともに良好な芦北産カキ「太秋」の出荷

芦北地域のカキ「太秋」は、大きな気象災害もなく順調に生育し、収穫期を迎えました。10月下旬に開催されたJAあしきた柿部会の果実品評会では、品質部門18点、大玉部門8点と前年度から出品点数が増え、今年は、大玉で果実の外観と品質ともに良好な果実が多く生産されています。そのため、今年産JA出荷計画量34tの内、高単価で取引されるお歳暮商材向け冷温貯蔵果実は7t(前年比150%)と多く見込まれています。
一方、当地域のカキ「太秋」の生産量は、生産者の高齢化と後継者不在により減少傾向にあるため、管理作業の省力・軽労化及び早期成園化が図れる低樹高ジョイント仕立て栽培の普及に平成27年度から取組み、現在では13戸、0.8haが導入しています。
当課では、低樹高ジョイント仕立て栽培を導入した生産者が安定した収量が得られるよう、接ぎ木方法、着果程度、結果母枝の配置、せん定方法など樹齢や生育ステージごとに分かりやすい栽培マニュアルの作成に向けて、関係機関と連携し取り組んでいます。
今後も、カキ「太秋」の生産量を維持し、高品質果実を安定出荷できるよう関係機関と連携し、取り組んでいきます。

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