阿蘇エリア

阿蘇地域は阿蘇市、阿蘇郡を所管しています。標高が200~900mと高低差が大きく、年平均気温は11~14℃で気候は冷涼であり、年間降水量は県内平坦地の1.5倍となっています。
農業生産は、減農薬・減化学肥料栽培による水稲(阿蘇コシヒカリ)や大豆、飼料用稲(WCS)、飼料作物が栽培され、水田裏作として麦が導入されています。野菜は夏季の冷涼な気候を活かした夏秋野菜産地として、トマト、アスパラガス、ホウレンソウ、ナス、ダイコン、キャベツなどが栽培されるほか、冬季にはイチゴの生産が行われています。また、花きでは、トルコギキョウ、リンドウなどが栽培されています。さらに、畜産では広大な牧野(放牧、採草)を活用した肉用牛繁殖経営や、大規模酪農経営が営まれています。

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県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課

〒869-2612 阿蘇市一の宮町宮地2402

電話:0967-22-0622

FAX :0967-22-3563

阿蘇エリア普及現地情報

2025年1月

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審査(打ち合わせ)の様子
審査に合格した直接検定候補牛

優れた種雄牛造成に向けた取り組み ~候補牛の審査を実施~

畜産業振興の基礎となる家畜の改良増殖には長い年月と多大な労力を必要としますが、優秀な種畜がもたらす便益は大きく、阿蘇地域では県畜産関係者団体、生産者が一丸となり、肉用牛の改良に取り組んでいます。
本県では遺伝的能力評価に基づく種雄牛の作出を実施しており、その候補牛は指定雌牛と呼ばれる県内トップクラスの高能力を有する雌牛から生まれた雄産子が対象となります。なお、指定雌牛は、県内では80頭(黒毛30頭、褐毛50頭)が選抜されますが、そのうち47頭(黒毛10頭、褐毛37頭)は阿蘇地域からとなっています。
指定雌牛から生まれた候補牛は3~4ヶ月齢時点での1次審査、4~5ヶ月齢時点での2次審査により、発育や体型の審査、様々な病気の検査を実施します。合格した牛は本県が購入し、畜産研究所での検定や厳しい選抜が実施され、年に2~3頭程度が基幹種雄牛(5歳)になることができます。
本年度は、既に阿蘇地域からの候補牛の買い上げ頭数が4頭(褐毛)となっており、今月は6頭の1次審査(かなり多い)と、1頭の2次審査を実施しました。関係機関による適正な飼養管理の指導と生産者の協力のもと、例年にない頭数の候補牛が確保できています。
当課では、引き続き阿蘇地域から肉用牛の改良に資する優れた種雄牛造成を目指し、本県の家畜改良増殖目標に沿った畜産経営の推進を図っていきます。

2025年1月

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現地検討会の様子
花が揃って咲いているほ場の様子

「阿蘇いちご」厳寒期に向け準備中です。

阿蘇地域では10月28日からイチゴの出荷が始まり、初日は約790パックが出荷され、現在は約10,000パック/日のペースで「ゆうべに」や「恋みのり」が出荷されています。12月上旬には1番花が出揃い、12月中旬にピークを迎える見込みです。
今後の厳寒期は、日照時間の減少や低温、着果負担により株の草勢が弱くなります。促成イチゴの栽培では、冬季に加温機を使用してハウス内の温度を確保しながら栽培を行いますが、阿蘇地域は、冬季の暖房費が平坦地より年間6万円/10a程度多く掛かります。そこで、より効率的な栽培技術を検討するため厳寒期の管理について現地検討会を行いました。検討会では、当課からハウス内の温度管理や電照時間、摘花などについて説明を行いました。また、農薬メーカーから花粉交配用ミツバチの管理方法や、注意点等について説明を行いました。
検討会の中では、現在の出荷状況や、電照の開始時期、ハウス内の夜温を栽培指針より2℃高く設定することなどが盛んに議論され、参加者からは「費用が掛かっても、それ以上に稼げば良い」などの品質及び収量向上を優先する意見が出されました。
当課では、今後も引き続き、阿蘇地域におけるイチゴの生産安定・収量向上技術の確立に向け、支援していきます。

2025年1月

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(有)阿部牧場の視察
新規クラブ員歓迎会

阿蘇地方4Hクラブの活動活性化に向けた取り組み

阿蘇地方4Hクラブは、近年クラブ員が減少するとともに活動が停滞しており、組織としての魅力が低下していました。そこで本年度は、新規クラブ員の確保と、魅力ある活動を実施することで、4Hクラブの活性化に取り組みました。
まず、5月にクラブ員から本年度実施したい活動を聞き、それらを1つ1つ実現することにしました。7月には4HクラブのOBである(有)阿部牧場への視察及び阿部社長との交流会、8月にはSNS発信に係る勉強会、9月には婚活講座(宇城及び八代地方4Hと合同開催)等を実施しました。
併せて、課内の普及指導員やクラブ員、市町村の協力を得て勧誘活動を実施したことで、新たに4名が加入し、10月には新規クラブ員歓迎会を実施しました。
新規クラブ員からは「儲かっている農家を視察したい」、「販売戦略について学びたい」、「もっと4HクラブのPRが必要」といった前向きな意見が出てきています。
農業普及・振興課としては、引き続き新規クラブ員の増加を目指して勧誘活動を行うとともに、若手農業者が活発に交流・活動できるよう4Hクラブの活動を支援していきます。

2024年12月

体育館内での支援センターの演習
バス運行や消毒ポイント等の演習

阿蘇地域家畜防疫演習会の開催

高病原性鳥インフルエンザは、毎年11月1日から翌年の4月30日まで「特別防疫対策期間」として防疫対策の徹底が図られています。しかしながら、毎年国内では、家禽において発生が確認されており、多数の鶏が殺処分されております。本年は対策期間前に既に4道県で発生があり、今後いつどこで発生してもおかしくない状況であることから、緊張感を持った日々の対応が必要です。
高病原性鳥インフルエンザを始めとする悪性家畜伝染病の対応には、発生に備えた準備が重要であることから、今年度阿蘇地域では、後方支援業務を中心とした家畜防疫演習会を関係者約90名の参加のもと10月30日に、飼養羽数が多い高森町において開催しました。
当課から「阿蘇地域における防疫体制」について説明を行った後、市町村職員に協力頂き、「支援センターの運営」や「バス運行管理」、「通行規制」、「消毒ポイント」についてロールプレイング演習を行いました。参加者である市町村や警察、JA等関係団体は各自の役割を確認するとともに、万が一発生した際に、迅速かつ確実な対応ができるよう、業務の理解を深めていただきました。
今後とも、有事の際に備え、関係機関とのより一層の連携を図り、地域一体となって防疫体制の強化を進めていきます。

2024年12月

放牧事故箇所をマッピング
現地調査(牛道の深さ計測 :深さ50㎝)

放牧中の事故減少に向けた現地調査の実施

阿蘇地域では広大な草原を活用した放牧が実施されていますが、放牧事故による妊娠牛の死亡等が毎年数件発生しており、生産者の精神的・経済的ダメージは大きく、放牧を取りやめる原因の一つになっています。
そこで、放牧中の事故軽減に向けた技術支援を検討するため、今年度は広域放牧を実施している木落牧野(借り手:JA菊池(菊池阿蘇広域放牧利用組合))での過去の事故事例を調査し、事故対策の検討を実施することとしています。
当課では10月24日、JA菊池の営農指導員とともに実際に事故が発生した場所の現地調査を実施しました。事故発生の多くは牛が水を飲むために移動中に発生したものでしたが、傾斜角度が大きい場所からの滑落や沼地に足を取られ身動きが取れなくなったもの、また、足を滑らせ牛道の深みに仰向けにはまり死亡した事例などがありました。
今後は、今回の現地調査を基にハザードマップを作成し、借り手のJA菊池や貸し手のJA阿蘇(木落牧野組合)と効果的な事故回避方法を検討していきます。また、今回の活動を来年2月開催予定の牧野組合長会議等で情報共有することにより、放牧中の事故軽減及び放牧取組農家・頭数の維持に繋がるよう活動していきます。

2024年12月

「はるしずく」の栽培暦
赤かび病防除のチラシ

大麦生産連携会議を開催しました! ~中山間地域の営農法人支援に向けて~

阿蘇管内では、中山間地域の地域営農法人の収益性向上による経営安定化と土地利用率向上のため、大麦栽培を推進しています。令和2年度から、高森町と南阿蘇村の法人がもち性大麦「ホワイトファイバー」の栽培を開始し、当課は品質向上に向けて関係機関と連携しながら現地巡回指導や展示ほ設置を行ってきました。  
しかし、出穂期及び収穫前の降雨や倒伏による品質の低下が問題となっているほか、もち性大麦の機能性に着目した健康ブームも落ち着き、需要が停滞しつつあります。そこで、令和7年産(今年度播種)からは、倒伏しにくく、入梅前の収穫が見込める二条大麦「はるしずく」へ品種を切り替えることで、品質の向上と需要の増加を図ることとしました。
今回、「はるしずく」の品種特性について理解を促し、今後も関係機関一体となって支援を行うため、10月29日に生産連携会議を開催しました。会議では、当課から令和6年産の生産状況や展示ほの結果を報告した後、高原農業研究所から試験データを用いて「ホワイトファイバー」と比較した「はるしずく」の品種特性の説明がありました。また、昨年度の栽培状況から改善点を踏まえ、当課から栽培管理のポイントや赤かび病防除について説明しました。生産者からは、「倒伏しにくく、成熟期が早いのはうれしい」と期待が高まるとともに、肥培管理や防除等、品質向上のための栽培管理に対する意識の向上が見られました。
令和7年産に向け、11月上旬から播種が始まります。当課では、中山間地域の地域営農法人の経営安定化に向けて、関係機関と連携しながら支援を行ってまいります。

2024年12月

立枯病発生ほ場
土壌病害対策講習会の様子

トルコギキョウの土壌病害対策の実施

阿蘇地域では34戸の生産者により約11haでトルコギキョウが栽培されており、県内一の栽培面積を誇りますが、近年は全国的にフザリウム菌による立枯病の発生が大きな問題となっています。管内では、JA阿蘇南阿蘇花卉部会において約6割の農家で発生し、対策が急務となっています。
そこで、農業革新支援センターと連携した調査研究(所属横断)を活用し、管内5ほ場にて、土壌消毒前後のフザリウム菌密度の測定と、土壌消毒に係る管理を聞き取り、土壌消毒の効果を検証しました。その結果、各農家における立枯病の発生原因の推察や、菌密度という具体的な数値をもとにした指導ができるようになりました。
これらを踏まえ、JA阿蘇南阿蘇花卉部会において土壌病害対策講習会を2回実施しました。7月2日はフザリウム菌の特性とその対策について、10月18日は各薬剤の特性や、土壌消毒の効果を高める方法、菌密度の測定結果について説明しました。
その結果、これまで薬剤による土壌消毒に否定的だった農家が、初めてクロルピクリンによる土壌消毒に取り組んで立枯病発生ゼロを達成したり、適正な使用法を実践した農家では立枯病の発生率が大きく低下したりするなど、少しずつですが成果が表れてきています。
今後も、準高冷地のトルコギキョウ責任産地として、土壌病害対策を徹底し、持続可能なトルコギキョウ栽培技術の確立に向けて、様々な取組みを進めていきます。

2024年12月

出荷査定会の様子
本ぽの様子

『阿蘇いちご』の出荷が始まりました!!

阿蘇地域では例年9月上旬から36戸の生産者によりイチゴの苗の定植が始まります。定植の時期を決めるうえで最も重要なのが花芽分化です。花芽分化とは成長点に花芽ができることで、この花芽分化を確認した後に定植を行うことで、単価の高い年内の収量を確保することが可能になります。花芽分化を促進させる条件として低温、短日、体内窒素濃度の3つが大きく影響しているといわれており、本年度は夏の猛暑により気温の低下が遅くなり、花芽分化が遅れる心配がされましたが、例年通り9月5日前後には花芽分化のピークを迎え、9月の中旬に定植のピークとなりました。
今年は10月28日から出荷が始まりました。初日は「恋みのり」が2Lサイズを中心に約790パック出荷されました。11月1日からは熊本県の育成品種「ゆうべに」の出荷も始まり、約100パックが出荷されました。今後も順調に出荷される見通しで、本格的に出揃うのは、ゆうべにで11月中下旬、恋みのりで11月下旬になる見込みです。
当課では、今後も阿蘇地域におけるイチゴの生産安定・収量向上技術の確立に向けた支援を継続していきます

2024年12月

飛騨高山トマト選果場視察
棟高の高いハウスが並ぶトマト団地

岐阜県の夏秋トマト産地を視察しました!

阿蘇地域では冷涼な気候を生かした夏秋トマト栽培が行われており、近年は新規就農者の増加や販売金額の増加等、今後も益々の発展が期待されています。しかし、近年は温暖化による生育不良や選果場の人手不足、物流の2024年問題による輸送時間の増加等の課題に直面しており、対策が求められています。
そのような中、9月26日、27日にJA阿蘇中部トマト部会において、中部地方で最大の夏秋トマト産地である岐阜県高山市(JAひだ)への視察研修が行われ、飛騨高山トマト選果場や高山市のトマト団地を訪問しました。
JAひだでは、今年から選別基準を見直し、従来の「秀・優・良」の3等級から、「秀・優」の2等級へ変更し、選果場での人手不足の解消や物流の効率化への取組みが行われていました。また、トマト団地の視察では、高温対策のために棟高の高いハウスが並んでおり、仕立て方法や品種の違い等、熱心に意見交換が行われました。
部会員からは、「JAひだは果皮が硬い品種(麗月)であり、阿蘇地域で選別基準を見直すためには、様々な検討が必要」、「台風の心配がある阿蘇では、腰高のハウスは強度面で心配」等の声が聞かれました。
当課では、他産地の情報を収集しながら、阿蘇地域で取組み可能な高温対策や物流の効率化に向けた対策等を引き続き検討していきます。

2024年12月

会議の様子
労働力に関するアンケート結果まとめ

地域営農法人に関する関係機関担当者会議の開催 ~地域別連携会議に向けて~

阿蘇地域では、地域営農法人の設立が平成27年度から進み、現在20法人が水稲栽培を中心に活動しています。今後、法人役員や構成員の高齢化が進むと法人の運営・経営に対する担い手確保や人材育成が大きな課題になると考えられています。また、法人の抱える課題は様々な中で、農地の立地条件が近い法人は課題の傾向も類似していると考えられます。
そこで、当課では法人を地域別に分けた連携会議を開催し、法人の抱える課題の共有化や解決に向けた意見交換を計画しています。今回は、まず関係機関内で情報共有し意識統一を図るため、9月30日に担当者会議を開催しました。
会議では、先に実施した労働力に関するアンケート調査結果を説明したのち、各市町村及びJA阿蘇から法人に対する活動支援内容を報告いただきました。また、関係機関の活動事例として、阿蘇市から法人支援の具体的な活動や阿蘇市地域営農法人情報交換会議などについて紹介いただきました。市町村によって、法人設立数や設立後の年数、農地の立地条件など異なるものの、他市町村の取り組みやアンケート結果などについて関心が寄せられ、様々な意見交換を行うことができました。
今後予定している地域別連携会議について内容を検討し、今回の会議において、地区割りや開催場所等について関係機関の了解を得ましたので、法人間の連携強化に向けて取り組んでいきます。

2024年12月

首輪(GPS取得のため)をつけた牛
中継基地の説明を受ける参加者

放牧管理の負担軽減に向けたICT活用現地検討会を開催

阿蘇地域では広大な草原を活用した放牧が実施されてきましたが、農家の高齢化や担い手の減少により、各牧野では放牧牛の監視作業が大きな負担となり、放牧休止等の原因の一つになっています。またこれまで一部の放牧実施農家から、牛の放牧状況確認のため頻繁に現地に行くことができない場合はとても心配という声がありました。
そこで今年度から当課では、企業(放牧ICT)協力のもと、6月から監視作業に不安を抱えている高森町小倉原牧野において牛の位置情報を確認できるシステムの実証をスタートしました。
9月17日には放牧ICTに係る情報提供及び普及を目的に現地検討会を開催し、放牧ICT企業や市町村、関係機関のほかスマート産業の振興と人材育成を図るため連携協定を締結した阿蘇中央高等学校の生徒など約30名の参加がありました。
実施農家からはICT機器の有用性について自宅から牛の安否を確認できるようになったとの前向きな声が聞かれ、参加者と活発な意見交換が行われました。
当課では、引き続き、ICT技術の実証や放牧条件の整備、更なる牧野利用に向けたマッチング支援を行い、世界農業遺産の根幹である牧野の畜産的利用(放牧・採草)を推進していきます。

2024年12月

展示ほ調査の様子
阿蘇コシヒカリ出発式の様子

阿蘇地域の「コシヒカリ」の品質向上に向けて

阿蘇地域では水稲品種「コシヒカリ」が約2,048haが作付けされています。その多くは、減農薬・減化学肥料の「特別栽培米」として栽培され、良食味米の生産が行われています。近年、生育期間中の高温障害による品質低下が問題となる中、当課では、品質や食味向上に向け、JA阿蘇と連携して展示ほ場を8か所設置し、調査結果を基に良食味米栽培技術指導を行っています。
そのような中、9月10日に初検査が行われ、検査を受けた502袋は全てが1等に格付けされました。同日に「阿蘇コシヒカリ出発式」が開催され、初検査を終えた「コシヒカリ」が県内小売業者へ出荷されました。また、需要回復によるコメ不足や生産コスト上昇等の影響を考慮し、JA阿蘇では少しでも生産者へ還元するため、出発式時点で日本一高い米概算金(特栽米1等:22,020円)を設定しました。
今年は、台風の影響で例年より収穫が1週間遅れたものの、被害は最小限に留まり、9月上旬より順次収穫し、収量は平年並みの予想です。
当課では、引き続き関係機関と連携しながら、環境負荷低減や高温障害等に対応した特色ある米づくりを支援していきます。

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