2024年のエリア普及現地情報

2024年12月

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首輪(GPS取得のため)をつけた牛
中継基地の説明を受ける参加者

放牧管理の負担軽減に向けたICT活用現地検討会を開催

阿蘇地域では広大な草原を活用した放牧が実施されてきましたが、農家の高齢化や担い手の減少により、各牧野では放牧牛の監視作業が大きな負担となり、放牧休止等の原因の一つになっています。またこれまで一部の放牧実施農家から、牛の放牧状況確認のため頻繁に現地に行くことができない場合はとても心配という声がありました。
そこで今年度から当課では、企業(放牧ICT)協力のもと、6月から監視作業に不安を抱えている高森町小倉原牧野において牛の位置情報を確認できるシステムの実証をスタートしました。
9月17日には放牧ICTに係る情報提供及び普及を目的に現地検討会を開催し、放牧ICT企業や市町村、関係機関のほかスマート産業の振興と人材育成を図るため連携協定を締結した阿蘇中央高等学校の生徒など約30名の参加がありました。
実施農家からはICT機器の有用性について自宅から牛の安否を確認できるようになったとの前向きな声が聞かれ、参加者と活発な意見交換が行われました。
当課では、引き続き、ICT技術の実証や放牧条件の整備、更なる牧野利用に向けたマッチング支援を行い、世界農業遺産の根幹である牧野の畜産的利用(放牧・採草)を推進していきます。

2024年12月

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展示ほ調査の様子
阿蘇コシヒカリ出発式の様子

阿蘇地域の「コシヒカリ」の品質向上に向けて

阿蘇地域では水稲品種「コシヒカリ」が約2,048haが作付けされています。その多くは、減農薬・減化学肥料の「特別栽培米」として栽培され、良食味米の生産が行われています。近年、生育期間中の高温障害による品質低下が問題となる中、当課では、品質や食味向上に向け、JA阿蘇と連携して展示ほ場を8か所設置し、調査結果を基に良食味米栽培技術指導を行っています。
そのような中、9月10日に初検査が行われ、検査を受けた502袋は全てが1等に格付けされました。同日に「阿蘇コシヒカリ出発式」が開催され、初検査を終えた「コシヒカリ」が県内小売業者へ出荷されました。また、需要回復によるコメ不足や生産コスト上昇等の影響を考慮し、JA阿蘇では少しでも生産者へ還元するため、出発式時点で日本一高い米概算金(特栽米1等:22,020円)を設定しました。
今年は、台風の影響で例年より収穫が1週間遅れたものの、被害は最小限に留まり、9月上旬より順次収穫し、収量は平年並みの予想です。
当課では、引き続き関係機関と連携しながら、環境負荷低減や高温障害等に対応した特色ある米づくりを支援していきます。

2024年12月

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アスパラガス農家見学の様子
アスパラガス選果場見学の様子

阿蘇地域新規就農現地研修バスツアーの開催

阿蘇地域は県内で最も新規就農者が多い地域です。去る9月14日、阿蘇地域の更なる担い手確保を目的として、当地域で新規就農を希望される方を対象に、県農業公社新規就農支援センターと共催で現地研修バスツアーを開催し、県内外から9名の参加がありました。
当日は、阿蘇地域を代表するアスパラガス農家やトマト農家の園場を見学し、現地での栽培管理や研修内容の説明、就農に必要な情報提供を行うとともに、今年度から就農を開始された新規就農者との意見交換も実施し、就農意欲の向上や地域の魅力を伝えることができました。
今回のバスツアーでは、現役の大学生からシルバー世代までと幅広い層に参加いただき、また、県外からの転居希望者が半数を占める状況となりました。参加者からは、「実際の農業の現場を見て、農家の方の実体験を聞くことができ、非常に勉強になった」等の声が聞かれ、次年度への取り組みに弾みをつけることができました。
当課では、今後も担い手の確保・育成の取組みを継続的に進め、新規就農者から選ばれる産地づくりを進めてまいります。

2024年10月

連携協定締結式の様子
阿蘇中央高校との打合せの様子

阿蘇中央高校等とのスマート産業人材育成に関する連携協定書の締結について

阿蘇地域振興局(農林部)は7月22日、阿蘇中央高校と農林業分野の関係団体(阿蘇市、株式会社中九州クボタ、東海大学)とで5者連携協定を締結しました。
今回の連携協定の目的でもあるスマート農林業の振興と人材育成は、本県が進めるスマート農林業の活用推進に係る取組みであることから、阿蘇地域振興局として協定の参画に至ったところです。
農業普及・振興課では今後、①スマート農業の推進に係る取組み、②栽培・管理技術指導の取組み、③次世代を担う農業人材の育成 を取組みテーマに掲げ、スマート農業での水稲や放牧などの実証試験について、現地で高校生に実際に見て、触れて、学んでもらうことを検討しています。
また、当課ではかねてより阿蘇中央高校と連携して湿地性カラーの展示ほ設置や栽培技術指導にも取り組んでおり、今後は他の関係団体とも相互協力することにより、さらに効果的な取組みを展開していく予定です。農林部を上げて生徒のスキルアップを支援することで、スマート産業人材育成を推進し、将来、地域のリーダーとなる担い手の確保・育成を進め、さらには阿蘇中央高校の魅力向上による生徒増にも繋げていきたいと考えております。
去る8月6日には、阿蘇地域振興局(農林部)と阿蘇中央高校との打合せを行い、実務者レベルで取組内容やスケジュール感について協議ができたため、今後、具体的な取組みを進めていきます。

2024年10月

原川所長による講演
(参考資料)当課作成の「経営分析書」

地域営農法人の会計担当者向け研修会の開催

現在、阿蘇地域では地域営農法人が20組織設立されており、米価の低迷や資材高騰が続く中、収量・品質向上やコスト削減等による収益確保が課題となっています。これら課題解決に臨むにはまず自身の経営状況を把握・改善することが必要です。
そこで、地域営農法人の経営安定に向け、8月22日に、阿蘇地域集落営農連絡会、阿蘇地域農業振興協議会及び阿蘇地域振興局との共催により研修会を開催し、法人役員や関係機関等を含め約40名の参加がありました。
研修会では、各法人の代表理事及び会計担当を対象に、シーラスコンサルティングオフィスの原川所長より「決算書の見方と経営計画の立て方」についてご講演いただきました。講演会では、指標を用いた分析方法や計画立案に必要な情報等を学び、参加者からは「知らない用語が多く難しかった」との声が多かったものの、「コツコツ挑戦してみようと思う」等の声も聞かれました。
また、当課では、講演に際して、経営状況が一目で分かるよう法人ごとに「経営分析書」を作成・配布し、経営改善の検討資料として用いました。
今後も研修会を通じて、地域営農法人の経営安定・所得向上に対する支援を行うとともに、法人間連携も視野に入れながら課題解決を進めていきます。

2024年9月

説明を行っている様子
摘心機による摘心の様子

大豆摘心技術展示ほの現地検討会を開催しました!~阿蘇に適応した技術の探索~

阿蘇管内では、地域営農法人の収益性向上と水田フル活用のため、大豆の作付けを推進しており、現在、阿蘇市を中心に約100haで栽培されています。しかし、管内の大豆の反収は、県平均と比べて低いため、当課では、高原農業研究所やJA阿蘇と連携しながら、大豆の安定生産に向けた取り組みを行っています。
阿蘇地域の大豆栽培は、平坦地より約1カ月早く、5月下旬から播種が始まります。そのため、初期生育が旺盛で、徒長により倒伏しやすいことが問題となっていました。 
そこで、熊本県では一般的に導入されていなかった摘心技術(生育期間中に主茎長を切り取る技術)に着目し、令和2年度から実証試験を行っています。摘心すると、主茎長が短くなり耐倒伏性が高まるほか、分枝数や着莢数が増加し収量向上が期待されます。令和5年度の試験において、本葉11葉期と開花直前の摘心では、収量増加は見られなかったものの、倒伏軽減の効果が確認されたことから、今年度は、昨年度より早い7葉期に摘心を実施しました。8月1日に管内の大豆生産者と関係機関を参集し、大豆の栽培管理や摘心技術について説明を行った後、実際に摘心機で作業を行いました。参加者からは、「摘心時期を早めたことで、収量増加に影響があるか楽しみ」といった声が聞かれました。また、摘心技術の時期や位置、その他の栽培技術について活発に意見交換が行われ、有意義な検討会となりました。11月には収量調査を実施し、実証試験の結果を関係機関を交えて検討する予定です。
当課では、引き続き大豆の安定生産に向けて関係機関一体となって取り組んでまいります。

2024年9月

新規生産者が管理を改善する様子
栽培講習会の様子

湿地性カラーの産地化に向けた取り組み

阿蘇地域では、豊富な湧水や川の水を活かして、8戸、37aで湿地性カラー(以下、カラー)が栽培されていますが、そのうち令和2年から現在までに4戸が新たに生産を始めています。しかし、部会等の組織はなかったため、生産者同士の横の繋がりは少なく、販売戦略も立てづらい状況でした。そこで、昨年5月に生産者、JA阿蘇及び当課等で構成された「JA阿蘇湿地性カラー研究会」を立ち上げ、産地化に向けた取り組みを加速化させています。
そのような中、7月12日に、新規生産者の栽培技術向上と、関係機関のカラーに対する理解促進を目的に、現地検討会及び栽培講習会を開催しました。今回は、関係機関として新たに、阿蘇地域振興局と「阿蘇中央高校の魅力向上のための連携協定」を結んだ阿蘇中央高校の先生や、カラーの試験研究に新たに取り組む高原農業研究所の研究員も参集しました。
当日は、新規生産者を含む3ほ場を巡回後、JA阿蘇からは令和5年産の販売実績、当課からは農業研究センターの新たな研究成果やカラーの基本的な生理生態等について説明し、栽培技術等について活発な意見交換が行われました。
新規生産者は、栽培に関する不安が解消されるとともに管理方法の改善策が得られ、関係機関においては現場の課題や産地の動きを肌で感じてもらい、実りある機会となりました。
今後も生産者及び関係機関一体となり、カラー産地化に向け取り組んでいきます。

2024年8月

女性部部長から局長へ牛乳贈呈
牛乳を飲みながら懇談

「父の日に牛乳(ちち)を贈ろう!キャンペーン」の開催

「父の日に牛乳(ちち)贈ろう!キャンペーン」は、県産牛乳のPRと消費拡大を目的に平成10年から菊池地域で開始され、その後県内各地で展開されています。阿蘇地域では大阿蘇酪農協女性部が、毎年父の日に合わせて関係機関へ牛乳の贈呈を行っています。
本年も6月11日に大阿蘇酪農協女性部が阿蘇地域振興局を来訪し、当キャンペーンの一環として、200ml入り「阿蘇の雫」を贈呈されました。
阿蘇地域の酪農は、広大な草原を活かし牧草等の飼料生産が行われています。贈呈式後の懇談では女性部部長から「阿蘇の牧草を与え生産した牛乳です。多くの人に飲んでいただきたい。」と語られていました。
当課では、今後も関係機関と連携し、牛乳消費拡大を含めた様々な取組みを通して生産者の経営安定に向け支援を実施していきます。

2024年8月

講習会に向けた事前検討の様子
採苗の様子

「育苗が始まります。」イチゴ栽培講習会を開催しました!

阿蘇地域では、41戸の生産者により12haでイチゴの栽培が行われており、トマト、アスパラガスに次ぐ阿蘇の産品になっています。南阿蘇村を中心とした南部地区では「ゆうべに」が、阿蘇市を中心とした中部地区では「恋みのり」が主な品種として栽培されています。JA阿蘇イチゴ部会の令和5年産販売実績は、7億8千万円(対前年比105%)と過去最高の販売額となりました。
本年度の生産に向けて、6月上旬からは親株から伸びた子苗を別のポットに植え付ける「採苗」が行われています。7月中旬からは9月上旬の定植に向け、採苗した苗を育てる「育苗」が始まります。育苗の良し悪しが定植以降の収量に大きく影響するため、イチゴ栽培で最も重要な時期です。
そこで、6月28日に、新規採用職員の私は入庁後初めて、南部地区、中部地区それぞれでの講習会開催を担当しました。講習会では当課から、定植時小苗にならないような水分・施肥管理について、実際の苗の葉色を参考に示しながら説明をしました。また、農薬メーカーから、農薬や病害虫防除等について説明を行いました。
講習会の中では、施肥管理による花芽分化時期への影響や、ハダニやアザミウマ等の病害虫対策について盛んに議論され、生産者からは「普段聞けない話が聞けて良かった」などの声があり、有意義な講習会となりました。
当課では今後も阿蘇地域におけるイチゴの生産安定・収量向上技術の確立に向けた支援を継続していきます。

2024年8月

選果・箱詰めされた様子
現地検討会の様子

夏秋トマトの出荷が始まりました!

阿蘇地域では冷涼な気候を生かして、約200戸、約53haで夏秋トマトの栽培が行われています。4月中旬に苗を定植し、6月中旬から本格出荷となり、7~9月に出荷のピークを迎えます。平坦地の出荷が減少する時期に出荷できることが産地の魅力で、主に九州・関西方面に出荷されます。
令和5年産は、比較的安定した気候に恵まれ、JA阿蘇の夏秋トマト販売金額は21億円(前年対比102%)となり、過去最高の実績を達成しました。令和6年産では、出荷査定会や現地検討会等の開催により生産者の意欲が高まっており、出荷が始まったことで選果場も活気づいています。
しかし、地下水位が高く排水性が悪い地域では初期生育コントロールが難しく収量が低下するといった問題があります。そこで当課では、令和3年度から令和5年度の3年間で、地下水位の高い地域の生育コントロール対策として肥料養分がすぐに溶け出さない肥効調節型肥料※の利用を実証し、その有効性を確認しました。
今年度は、これらの検証結果を講習会や現地検討会等で周知したことで、肥効調節型肥料の利用が拡大しており、更なる収量向上が期待されます。
今後も、夏秋トマトの収量向上技術の確立に向けて支援を続けていきます。

※ 肥効調節型肥料:肥効を持続させるために様々な方法で肥料成分の溶出を調節した化学肥料のこと

2024年7月

会議の様子
家畜伝染病発生時における役割分担

畜産関係事業説明会及び家畜伝染病対策会議開催

農業普及・振興課では畜産事業の円滑な推進及び家畜伝染病対策に関する関係機関との連携強化のため、令和6年5月22日(水)、阿蘇家畜保健衛生所と共催で担当者会議を開催しました。
会議前半では当課から令和6年度の畜産関係事業について説明し、後半では当課及び家畜保健衛生所から家畜防疫対策について説明を行いました。当課からは「悪性家畜伝染病発生に伴う市町村及び関係団体との連携」について防疫体制やそれぞれの役割について説明し、防疫に対する意識の向上を図りました。
意見交換では、生産基盤を強化するために必要な種雄牛造成や家畜導入事業、また、広域放牧における衛生対策の重要性など貴重な意見をいただきました。
今後も引き続き、畜産経営の安定化に向け、畜産の振興に関する各種事業の推進及び家畜防疫対策の強化を進めていきます。

2024年7月

ほうれんそう部会の作付面積の見通し

JA阿蘇小国郷ほうれんそう部会における経営継承支援の取組み

阿蘇地域の北部に位置する小国郷(小国町、南小国町)では、年間を通してほうれん草が栽培される県内一の産地ですが、近年は生産者の高齢化と新規就農者の減少に伴って、産地の衰退が懸念されています。
そこで、当課では、昨年度からJA・町と連携し、産地の維持を目的としてJA阿蘇小国郷ほうれんそう部会(82戸)の部会内での継承支援に取り組んでいます。
まず部会の現状と将来の見通しを把握するため、支部別反省会(R6.2月)において、アンケート調査を実施したところ、10年後には作付面積が半減してしまう恐れがあることが分かりました。また、支部別反省会では参加者から、「空きハウスの部会内での継承の仕組みを作ってほしい」などの意見が出され、生産者レベルで産地衰退に対して危機意識を持たれていることが分かりました。
5月11日に開催された部会総会では、当課から生産者及び関係機関に対して、支部別反省会でのアンケート結果を共有するとともに、今後の具体的な取組方針について説明を行いました。
当課では、今後も関係機関と連携し、アンケート結果をもとに部会内での継承に向けたマッチングを進めるとともに、産地の継承体制の構築を支援していきます。

2024年6月

現地検討会の様子
無人機と有人機との協調作業

ロボットトラクターで農作業を効率化・省力化

阿蘇地域では、農作業受託の増加や作業効率の向上により、農地集積・集約が進み、土地利用型営農法人の経営面積が拡大しています。しかし、規模拡大に対応するための労働力が限られていることから、機械の効率化や作業の省力化が求められています。そこで、昨年度に引き続き全国農業システム化研究会と連携して、スマート農機の活用による水稲栽培作業の効率化・省力化の実証試験を行っています。
当課では、令和6年4月23日に、生産者及び関係機関約30名を参集し、無人機(ロボットトラクター)と有人機(トラクター)との協調作業による基肥散布の現地検討会を開催しました。
検討会では、ほ場2筆を使用し、オペレーター1名で無人機と有人機を操舵する協調作業を実演しました。出席者からはマッピングに関する質問や意見が多く挙がり、特に、従来であれば毎年必要なマッピング作業が、一度測定して得たデータを翌年以降も使用できる※ようになったことに、「さらに作業時間が削減できる」等と参加者の関心を集めていました。
今後、実証試験で得られた成果や検討会での意見を参考に、調査結果をまとめ、スマート農業技術を活用した効率的で安定的な生産による経営体の所得向上を支援していきます。

※ただし、ほ場の形状等に変化がないか確認を行う必要がある

2024年6月

喜んで草原を飛び回る牛達
打合せ会議の開催

広大な牧野を活かした広域放牧の開始

4月25日、阿蘇市の阿蘇北外輪山に位置する跡ヶ瀬牧野と狩尾牧野において、阿蘇管外の畜産農家から妊娠牛を受け入れる熊本型放牧畜産事業の入牧式が開催されました。当日は、青空の下、県央及び県北地域の母牛83頭が入牧し、元気よく牧野に駆け出しました。
また、木落牧野(阿蘇市)ではJA菊池から、小倉原牧野(高森町)では宇城地域の任意集団から放牧牛を受け入れており、借り手側(畜産農家)には生産コスト低減や省力化、受け手側(牧野組合)には草原の維持に繋がるといったメリットがあります。
それぞれの受入牧野毎に、放牧を開始する前に関係者が一堂に会した打合せ会議を開催し、昨年度の放牧実績や本年度の計画、放牧牛の健康状態を把握するための衛生検査の日程調整や万一の事故発生に備えた連絡網など放牧推進体制を確認しました。会議では、IoT機器を活用した放牧の実施など活発な意見交換が行われ、今後関係機関と協力して課題解決に向けて取り組んでいきます。
当課では、引き続き、放牧条件の整備やIoT技術の実証、更なる牧野利用に向けたマッチング支援を行い、牧野の畜産的利用(放牧・採草)を推進していきます。

2024年4月

3/26第1回目勉強会 作型の早進化、技術改善点を説明し、本年産から各人が出来る範囲で取り組むことを決定。

JA阿蘇南部トマト部会青年部支援と夏秋トマトの 収量向上への取組み

阿蘇地域の夏秋トマトは、収量、販売価格とも安定しており、昨年度の販売金額は2,100百万円で過去最高の販売金額となりました。
この様な状況の中、JA阿蘇南部トマト部会では、就農7年目以下で20~30代の新規就農者や後継者を中心に11名で青年部が結成されました。彼らは、夏秋トマトの栽培に情熱を持って取り組んでおり、南部トマト部会の中でもトップクラスの収量を上げているメンバーもいます。
しかし、南部トマト部会の平均収量(9.2t/10a)、最高収量(16t/10a)は、阿蘇市を中心とする中部トマト部会に比べそれぞれ約2t少ない状況にあります。このため、青年部は中部トマト部会に負けない10a当たりの収量を目指すとともに、南部トマト部会全体の収量向上に貢献することを目標としています。
また、当課では、これまで夏秋トマトの収量向上対策として、高温対策や地下水位の高いほ場での緩効性肥料の使用などに取り組んできましたが、更なる収量向上には新たな技術改善が必要であると考え、JA営農指導員との意見交換を行いながら検討を重ねてきました。その結果、7~9段果房の着果不良と8月後半から発生する裂果に重点を置き、その技術改善に取り組むこと、南部トマト部会の定植の早進化を図ることとなりました。
今後、当課では、上記改善点の現地実証を進める中で、南部トマト部会では青年部を重点対象として取り組み、その育成を図って参ります。

2024年4月

研修会の様子

地域営農法人の運営をサポートする研修会の開催

現在、阿蘇地域では地域営農法人が20組織設立され、地域の農地を守る担い手として育成することが重要な課題となっています。
そこで、地域営農法人の運営に対するフォロー活動の一環として、3月18日に、阿蘇地域集落営農連絡会、阿蘇地域農業振興協議会との共催により研修会を開催し、法人の役員や関係機関等から約50名の参加がありました。
研修会では、一般社団法人日本協同組合連携機構の小林氏から「集落営農組織・法人の展開方向について」、農事組合法人久石ファームの藤原氏から「(農)久石ファームの取組みについて」を講義していただきました。法人として、担い手確保やコスト削減にどのように対応していくかが共通課題となっており、受講者から「様々な事例を紹介してもらい、今後の法人の方向性を決める参考になった」や「組織の広域化も重要だが、若い担い手確保も重要」と様々な声が聞かれました。
また、当課からは、法人の収益向上や低コスト技術導入に向けた水稲展示ほの成績報告や鳥獣被害対策の指導等を行いました。
当課では今後も研修会を通じて、地域営農法人の経営安定・所得向上に対する支援を継続するとともに、法人間連携の体制構築に向けて検討を進めていきます。

2024年3月

牧野組合情報交換会の様子

牧野組合情報交換会の開催

古くから野焼き・放牧・採草を行い、膨大な時間をかけて形成・維持されてきた牧野は近年、有畜農家の高齢化及び離農による放牧頭数の減少や人手不足が深刻化しています。そこで、阿蘇の広大な牧野の維持・再生及び肉用牛生産の拡大を図るため、牧野組合及び管内関係機関(延べ56名)を参集し、牧野組合情報交換会を開催しました。
牧野における畜産的利用(放牧・採草)を推進するうえで必要な情報・支援策として、省力化技術の取り組み(リモコン草刈り機や放牧牛の監視システム等)や普及活動・試験研究等で得た成果について情報共有を図るとともに、意見交換を行いました。参加者からは放牧牛監視に要する多くの時間を削減するために、GPSを使った管理に取り組んでみたいという意見が多く聞かれました。
現在、飼料や肥料等の価格高騰や子牛価格低迷により、生産現場にとって非常に厳しい状況に直面しています。このような中、改めて自給飼料や堆肥の活用等、国内資源による生産基盤の強化が注目されており、阿蘇地域の草原の維持と持続的農業の重要性はますます高まっています。
農業普及・振興課としては、引き続き阿蘇の広大な草地資源の有効利用とIoT機器等の新しい技術の導入に向けた支援を行い、阿蘇の畜産振興に取り組みます。

2024年2月

研修の様子

市町村・団体等向け阿蘇地域家畜防疫研修を開催

高病原性鳥インフルエンザを始めとする悪性家畜伝染病対策には通常時の準備が必要です。後方支援体制の中心となる振興局内職員に対してはこれまで複数回にわたり研修を行ってきましたが、今回初めて市町村・団体等のみを対象とした研修を開催しました。
研修では、近県の発生から阿蘇管内での発生まで様々なケースを想定し、これに対応する各機関に必要な行動や準備などについて解説を行い、事前の人員貼り付け等の毎年の見直しなど、準備の重要性を伝えました。
また、埋却ができないと判断された場合に使用する可能性のある、移動式焼却炉について、映像を用いてその設置や稼働に必要な条件等を確認しました。
今後も引き続き、万一の発生時に迅速な初動防疫が行えるよう、体制の強化に取り組んで参ります。

2024年2月

中部トマト部会総会・反省会
生育調査の様子

過去最高の販売実績で夏秋トマト出荷終了!

阿蘇地域では、阿蘇市、南阿蘇村を中心に200名の生産者が56haで夏秋トマトを栽培しています。令和5年産は定植時期の低温や、梅雨前線による大雨、異常気象等の影響を受けながらも、順調に生育し、過去最高であった令和4年産の実績を更に上回る販売実績となりました。
さらに収量を伸ばすためには、7月下旬から8月中旬の出荷量の落ち込みを改善する必要があります。初期に草勢を強くしすぎると着果数が増加し、梅雨の曇雨天と重なる時期にスタミナ切れとなり、着果数が減少することがその要因の一つです。特に、地下水位が高く、土壌が乾きづらいほ場では、土壌水分とともに肥料分が吸収されるため、より初期の草勢が強くなる傾向にあります。
そこで当課では、令和3年度から継続して、地下水位の高い地域の初期の草勢コントロールの改善を目的に、肥料溶出が水分の影響を受けない緩効性肥料を利用した実証試験を実施しました。3年間の実証試験により、緩効性肥料を利用することで、初期の草勢を抑え、長期に渡って肥効を維持させることで草勢安定につながり、収量が向上する結果が得られました。
これらの結果を12月に行われたJA阿蘇中部トマト部会、ミニトマト部会の反省会の中で報告し、緩効性肥料の有効性の周知を行いました。生産者からは来作での導入を検討する声や導入に対する相談が寄せられ、関心の高さが感じられました。
今後も、初期の草勢コントロールの技術確立に加え、収量向上に向けた技術支援を行ってまいります。

2024年2月

相談会の様子
決算分析書

地域営農法人向け経営相談会を開催

農家の高齢化や担い手の減少等が加速する中、阿蘇地域では平成27年から多数の地域営農法人(以下、法人)が設立されています。今後、法人の担う役割がますます重要となることから、法人の運営を支援するため、管内19法人を対象とした経営相談会を開催しました。
経営相談会では、各法人の決算書やアンケート調査結果を基に決算分析書等を作成し、経営視点を持ってもらうため、経営状況を説明しました。併せて、農業公社、市町村、JAと連携して、法人が抱える課題について意見交換を行いました。経営分析では、売上部門ごとに製造原価費等を分けていない法人が多く、コスト削減に向けた取組みとして、部門ごとの収支を把握するよう指導しました。意見交換では、各法人によって課題は様々ですが、共通の課題として「労力の確保」や「収入源の確保」等が挙がりました。また、一部法人からは「法人間同士で機械・作業の共同化が必要である」といった意見が聞かれ、将来への危機感が強まっていると感じました。
当課では、法人の経営維持・発展に向けて、土地利用型作物の収量・品質向上や冬作の導入支援、法人間連携に向けた関係機関との協議等を引き続き行っていきます。

2024年1月

今シーズンの広域放牧が終了しました

阿蘇では、阿蘇地域以外から妊娠牛の放牧を受け入れる「広域放牧」が実施されています。11月30日、阿蘇市の狩尾牧野と跡ケ瀬牧野において、今シーズンの広域放牧を締めくくる退牧式が開催されました。これで阿蘇市の木落牧野と高森町の小倉原牧野を含めた4牧野における今シーズン(4月-11月)の全ての広域放牧が終了となりました。
4月下旬から阿蘇の草原でのびのびと放牧されていたあか牛や黒牛は、冬の間はそれぞれ地元の牛舎に帰り、来年の春にまた阿蘇の牧野に戻ってきます。
放牧期間中、草地畜産研究所と協力し、オンラインで放牧牛の位置情報がわかるICT機器の実証試験に取組みました。試験終了後には、「自宅で牛の居場所がわかるから安心だった」、「牛を捜索する際に目星をつけられて便利だった」という声が聞かれました。
当課では、引き続き牧野組合や農業団体等と協力し、広域放牧の拡大やICT機器活用による省力化の検討を進め、牧野の畜産利用を推進してまいります。

2024年1月

過去最高の販売高!阿蘇の園芸品目で「稼げる農業」を実現

阿蘇地域は冷涼な気候特性を生かして園芸品目の栽培が盛んな地域です。管内の農業師匠※1の元で研修を積み、新たに農業を始める新規就農者が多い地域で、その多くはJA阿蘇の各生産部会に所属しています。生産部会の総会や出荷査定会が開催される中、夏秋トマト、アスパラガス、イチゴでは過去最高の販売高を記録し、園芸品目で「稼げる農業」を実現しています。
農業普及・振興課は、これまで品目ごとの課題に対して関係機関と協力しながら解決に向けた支援を実施してきました。その成果が販売高のアップに結び付いたと思っています。総会や出荷査定会では「ありがとう。おかげで良い品質の物が取れたよ」など感謝されることも多く、普及活動の醍醐味を感じる機会が増えています。今後も世界農業遺産※2に認定された阿蘇地域農畜産物の安定供給に向けて、生産出荷体制の更なる強化を図っていきます。

※1:農業師匠とは、阿蘇地域で農業を営む、後進の育成に情熱を持った先進農家。
※2:世界農業遺産とは、国際連合食糧農業機関が開始した仕組みで、次世代に受け継がれるべき伝統的農業や生物多様性、伝統知識、農村文化、農業景観などを全体として認定し、その保全と持続的な活用を図るもの。阿蘇地域は平成25年に認定を受け、今年で10周年。

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