2022年のエリア普及現地情報

2022年11月

優良な自給飼料作物(飼料用イネ)生産の推進

近年の気象変動や不安定な国際情勢等に起因する原油高、円安等の影響により飼料価格が高騰する中、飼料用イネ(WCS用イネ)は水田を活用した良質な粗飼料として広く利用されています。特に、阿蘇地域は県内でも上位の作付面積となっており、現在は「ミナミユタカ」などの飼料用イネ専用品種や主食用品種が利用されています。
当課では、従来の飼料用イネ専用品種から紋枯れ病抵抗性が改良された極短穂型品種の「つきあやか(中生)」、「つきすずか(極晩生で耐倒伏性極強)」、「つきことか(極晩生)」の3品種について阿蘇市に展示圃を設置し、現地試験を行っています。極短穂型品種は、穂が短く籾の収量が極端に少ない品種です。WCS(ホールクロップサイレージ)に調製時の乳酸発酵が促進され、良質サイレージの生産が可能であることに加えて、光合成された糖分が籾ではなく茎葉に蓄積されることなどから牛の嗜好性が良好で消化性が高いとされています。
去る9月14日、飼料用イネ展示圃の現地見学会を開催し、生産者、関係機関等約20名の参加がありました。生育ステージは、「つきあやか」、「つきすずか」は乳熟期、「つきことか」は未出穂でしたが、現在のところ、いずれの品種も茎葉は多く生育は良好でした。参加者は穂や茎葉を手で触るなどしてそれぞれの品種の特性を確かめるとともに、熱心に質問を行っていました。当品種の収穫は、出穂からおよそ30日後の9月下旬から10月初めに行われる予定です。当課では、今後も生産者等に対し、新たな優良草種の導入等の支援を行い、飼料作物生産を推進してまいります。

2022年11月

収穫風景
令和4年産阿蘇コシヒカリ出発式の様子

阿蘇「コシヒカリ」の品質向上を支援

阿蘇地域では約2,000haの「コシヒカリ」が作付けされており、その中でも、地域の慣行栽培基準より減農薬・減化学肥料で作られる「特別栽培米」が多くを占めています。
今年の阿蘇の「コシヒカリ」は、4月下旬から田植えが行われ、出穂後は高温で推移したため、例年より早く8月下旬から収穫が始まり、ほぼ全ての「コシヒカリ」の刈取りが終了しました。収穫直前には台風の発生による水稲への影響も心配されていたため、当課では収穫前に講習会を行い、収穫タイミングや台風対策など、高品質維持に向けた指導を行いました。
9月8日(木)にはJA阿蘇が主催する「米初検査祈願祭」及び「阿蘇コシヒカリ出発式」が行われ、検査された544袋の全てが1等に格付けされました。
日本穀物検定協会が主催する「食味ランキング」で、「特A」を獲得するための展示圃場も設置しており、JA阿蘇や熊本経済連等と連携しながら、良質米生産支援を行っています。今後は収量調査や食味分析など行い、特Aの再獲得を目指します。
当課では、引き続き阿蘇の良質な米の生産を図るため、関係機関と連携しながら支援を行っていきます。

2022年9月

阿蘇世界農業遺産ブース
野菜詰め合わせセット

阿蘇地域世界農業遺産を東京でPR!

7月16日、阿蘇地域世界農業遺産推進協会は阿蘇農業協同組合と連携して今年4月に豊洲で開業した「ミチノテラス豊洲」でのPR活動を実施しました。阿蘇地域世界農業遺産のPRパンフレット等を揃えた展示ブースに加え、夏秋野菜の産地「阿蘇」の新鮮な野菜や畜産物の販売ブースを設置しました。
展示ブースでは、パンフレットやPRグッズの配布と併せて農業遺産クイズ、アンケートを実施しました。特に、ロゴマーク入り風船を目当てに足を止める子連れの家族が多く、多くの方にクイズやアンケート調査に参加いただき、都心部の幅広い世代に向けた農業遺産の認知度向上につながる取り組みができました。
また、販売ブースでは、トマトやピーマン、ナス、きゅうりなど7種類の夏野菜の詰め合わせセットを限定300袋で販売し、午前中に完売しました。上記セットの他、あか牛ハンバークやトマトジュース、カップアイス等も販売し、今が旬の阿蘇の野菜や畜産物を多くの方にPRすることができました。
これからも、当課では阿蘇の農畜産物の知名度向上と併せて、世界農業遺産に認定された阿蘇地域の認知度がさらに全国で広がるような取り組みを、各関係団体と連携しながら進めてまいります。

2022年9月

牧野の畜産的利用の推進・再開を目指して

牧野の畜産的利用(放牧、採草)は、草原の維持に重要な役割を果たしています。一方で、有畜農家の減少等により、牧野の畜産的利用が衰退しているところもあり、草原の荒廃が懸念されています。 
そこで、R2年度から牧野利用推進にあたっての課題抽出および畜産利用を推進できる牧野の掘り起こしを目的に、阿蘇管内の牧野組合長を対象に聞き取り調査を実施しています。令和3年度までに81の牧野組合の調査を終了。今年度は14の牧野組合の調査を予定しており、7月末までに93の牧野組合からの聞き取りが終了しました。
各牧野組合からは、野焼き延焼事故の責任や輪地切り作業の省力化、また、収入源がない牧野の維持管理の継続や員外利用受入れの難しさなど、あらゆる意見を頂いています。
引き続き、管内牧野組合の現状把握に努めるとともに、畜産的利用の維持・拡大に向けた支援策(牧野利用希望者等とのマッチング、牧野整備等への助成、放牧再開マニュアル作成等)を図って参ります。

2022年9月

阿蘇地域でのトマトキバガ一斉防除

昨年10月に阿蘇地域で国内初確認となったトマトキバガについて、管内のトマト、ミニトマトの約71ha、参加農家277戸で一斉防除に取り組んでいます。
この一斉防除は、令和4年度重要病害虫まん延防止対策事業(消費・安全交付金)を活用し、JA阿蘇が事業主体で実施しており、阿蘇地域の夏秋トマト(ミニトマト含む)の栽培面積80%(※)が対象となっています。6~9月の実施期間中、月1回1週間の防除期間を定め農薬散布を行っています。
7月末までに2回の一斉防除を行った結果、農業研究センターが設置した阿蘇市と南阿蘇村のトラップ調査では、数頭のトマトキバガが誘引されていますが、当課が行った被害調査では、葉の食害痕を含め被害は確認されていません。
これまで当課では、昨年11月に開催された初回の対策会議から一斉防除に取り組む方針を示してきました。また、市町村・JAに対し、阿蘇地域で具体的な防除対策に取り組んでいることを、県内のトマト産地に示すことが必要であり、それが国内初確認となった地域の責任であることを説明し、理解を得ながら進めてまいりました。
特に、JAには、JAが事業主体となり共販外農家を含め阿蘇地域全体で一斉防除に取組むことが重要であることを説明し、事業主体となっていただいています。また、市町村へは、一斉防除には共販外農家への周知が必要であることを説明し、広報誌や防災無線等での事業周知を行っていただいたところです。
また、農業研究センターとは、トラップ調査結果やトマトキバガに有効な農薬などの情報交換を行いながら防除対策を進めています。特に、トラップ調査結果から阿蘇地域での越冬が確認されたことが、トマト栽培農家の一斉防除に対する理解につながりました。また、農業技術課とは、事業実施に向けて十分な打ち合わせと調整を行ってきたことが、6月からのスムーズな一斉防除の実施につながりました。
このように当課では、関係機関と連携しながらトマトキバガの被害0を目指し、今後も防除対策に取り組んでまいります。

※作物統計調査 令和2年産夏秋トマト栽培面積88haに対する割合

2022年8月

設立総会の様子
草刈りの様子

阿蘇の草原を守る草原再生オペレーター組合が法人化!

6月27日に、阿蘇市のホテルサンクラウン大阿蘇で「農事組合法人草原再生オペレーター組合」の設立総会が開催されました。
法人の前身「草原再生オペレーター組合」は、2007年に阿蘇市の農家らによって設立されて以降、持続的な草原保全や野草堆肥の活用促進に向け、阿蘇地域世界農業遺産推進協会の基金事業等を活用し、利用されていない草原での野草の刈り取りや販売などに取り組んできました。
当組合の活動による採草面積は、ここ数年増加傾向にあり、昨年度は151.7ヘクタールを採草しています。昨年12月には、こうした草原保全への取り組みが地域資源を活用した優れた取組みであると認められ、農林水産省などが主催する「ディスカバー農山漁村の宝(コミュニティ部門)」に選定されました。
当組合が法人化し、組織としての信用が更に高まったことで、今後の地域活動が大いに期待されます。
当課では、法人経営の安定化のために、阿蘇地域世界農業遺産推進協会と連携し、野草堆肥の利活用促進や情報提供等の支援を引き続き行っていきます。

2022年8月

「にじのきらめき」移植後の様子

二毛作(水稲+大麦)で収益向上と土地利用率向上を目指します

阿蘇地域では、地域営農法人の収益向上と土地利用率向上に向けて、水田裏作での大麦の作付を推進しています。阿蘇地域ではこれまで、大麦の作付け体系は、「ソバ+大麦」や「飼料作物+大麦」の二毛作体系が中心でした。そこで、令和元年度から、地域営農法人の収益性向上のための新たな二毛作体系として、「水稲+大麦」の体系を展示ほ活動により検証しています。
水稲の品種は、大麦収穫後の6月移植でも安定した収量が見込まれ、需要も安定している業務用米の早生・多収品種「にじのきらめき」を用いて、二毛作体系での適性を調査します。
大麦を栽培している、阿蘇市の「(農)ASO的石」と「(農)古代の里手野」の2法人の協力のもと、5月下旬~6月上旬に大麦を収穫後、6月14日と20日に「にじのきらめき」の移植が行われました。管内では、水稲単作の場合、5月移植が主流ですが、大麦収穫後では移植時期が約1か月遅くなるため、生育量の不足が心配されます。そのため、当課では今後も生育状況調査や収量確保に向けた管理指導を行い、収益向上に向けた取り組みを支援していきます。

2022年8月

南阿蘇村現地検討会
現地ほ場

イチゴの育苗期にむけた現地検討会を開催

阿蘇地域では約11haでイチゴを栽培していますが、定植前のクラウン径が県の示す生育目安より小さいことから、クラウン径を8㎜以上にすることを目標にして管理指導を行っています。しかし、令和3年産ではクラウン径が8㎜以上の生産者は半分を満たしませんでした。そこで、クラウン径を8㎜以上の苗にするため、今後の育苗の管理に向けた現地検討会を6月13日、14日に実施しました。
令和3年産の年内収量と年明け後の収量をクラウン径が8㎜以上の苗を定植した場合と8㎜未満の苗を定植した場合で比べたところ、年内の収量の差はありませんでしたが、年明け後の収量では8㎜以上の苗が収量は多い傾向になりました。このような具体的なデータを示すことにより、生産者からは「データがあるとクラウン径と収量の関係性がわかりやすい」との声をいただき、クラウン径を8㎜以上にする意義について理解を深めることができました。また、肥培管理やかん水管理方法などの指導も実施し、生産者、普及、JA担当職員と活発な意見交換を行いました。
当課では今後も現地検討会や講習会を開催することにより産地の課題の解決に努めて参ります。

2022年7月

会議の様子
農業普及振興計画の概要

関係機関の連携で阿蘇特有の畜産振興を促進!

5月31日、阿蘇畜産の円滑な推進及び関係機関との連携強化のため、市町村やJA等関係機関を参集し、3年ぶりに畜産担当者会議を開催しました。
令和4年度における「畜産関係事業」や「農業普及振興計画(畜産による牧野利用の推進)」の概要説明とその協力依頼と併せて、「悪性家畜伝染病発生に伴う防疫体制と連携」について再確認を行いました。
また、補助事業に関する要望・意見等や各市町村独自の補助事業について、情報共有・意見交換を実施しました。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢等の影響により、飼料や肥料、燃料等の価格が高騰していますが、関係機関一丸となって広大な草地資源を活かした畜産振興を図り、このピンチをチャンスに変えていきたいと思います。

2022年7月

水稲移植の様子
水稲苗の違い(左:慣行苗、右:高密度播種苗)

中山間地でも水稲低コスト技術を普及します

阿蘇地域では4月下旬から水稲の田植えが始まっており、ほとんどの地域では田植えも終盤を迎えているところです。
そのような中、当課では地域営農法人設立後の経営安定に向け、水稲低コスト技術として高密度播種苗移植栽培技術の導入を進めており、阿蘇市では同技術の面積が拡大しています。
今年度は、特に中山間地での同技術の普及と適応性を検討するため、昨年11月に設立された「農事組合法人 上田尻AGRI」(産山村)で展示ほを設置しました。
農機具メーカーの協力のもと4月27日に播種した高密度播種苗を5月15日に移植しました。移植作業は同技術の専用田植機で作業を行い、慣行で10aあたり約20箱使用していた箱数を約10箱まで減らすことができました。生産者からは「苗の積み荷作業が軽減され、作業の省力化を実感した。」「高冷地で上手くいくか不安だが、順調に生育してもらいたい」など様々な声が聞かれました。(農)上田尻AGRIでは、初めての取組みとなるため、定期的に巡回指導を行い、栽培に関する不安解消に努めていきます。
今後は現地検討会や成績検討会を開催し、中山間地における同技術の普及に向け、情報提供を行っていきます。

※高密度播種:苗箱への播種量を増やして、田植えの時に使用する苗箱数を減らすことで資材費や労働力の軽減を目指すもの。

2022年7月

新規就農者サポートチーム巡回の様子
新規就農者サポートチーム巡回の様子

地域全体で新規就農者を掴んで離さない!

阿蘇地域では、平成28年から始まった「農業師匠」の取組みにより、累計39名が師匠のもとで研修を積み、就農しています。また、その就農者がJAの生産部会で上位の成績を残すなど、新規就農対策として大きな成果を上げている一方で、農業師匠の研修受入数に地域間差が見られるなど課題も出てきています。
そこで、今後の阿蘇地域農業の新規就農者確保及び育成対策について意見交換を行う阿蘇地域新規就農者確保・育成支援担当者会議を5月20日に開催しました。市町村担当者、JA担当者及び就農支援アドバイザーがそれぞれの地域の現状や課題、今後の新規就農に対する方向性などについての意見交換を行い、地域ごとの新規参入希望者の研修受入れ体制の考え方に違い等について情報交換をしました。「今後も新規参入希望者の確保が必要。」という認識については全市町村で同じであり、「各市町村で新規就農希望者の受入れが困難な場合は相互に連絡を取り合う。」などを行うことで、市町村同士が連携を深め、阿蘇地域全体の新規就農者確保向上につなげていくことなどの話ができました。
今後は、市町村やJAと連携した新規就農者の巡回指導と併せて、新規参入希望者の就農者が少ない市町村と個別に話し合い、より具体的な新規就農者の確保・育成対策を講じていきます。

2022年5月

研修会の様子
(農)碧水の代表理事による事例発表の様子

地域営農法人の運営をサポートします

3月17日に阿蘇地域振興局をメイン会場として、管内の地域営農法人を対象とした地域営農法人研修会をオンラインで開催しました。
各法人の代表者や各市町村及びJAの担当者が、阿蘇地域振興局の大会議室や各市町村役場の会議室に集まり、計53名が参加する研修会となりました。
初めに、「インボイス制度による地域営農法人の課題と対策」について、栗山賢陽税理士(JA全中顧問税理士)から講義していただきました。法人として、令和5年10月から導入されるインボイス制度にどう対応していくかが課題となっており、受講した生産者からは、「内容は難しかったが、今後の対策を法人で話し合うきっかけになれば」という声が聞かれました。
次に、阿蘇市の(農)碧水の取り組みについて代表理事から発表していただきました。(農)碧水は土地利用型作物のほかにも、野菜や花などの高収益作物の栽培に取り組まれており、所得向上を目指す良い事例発表でした。
当課からは、試験展示ほの活動内容や農業版BCP(事業継続計画)の紹介、農作業事故防止啓発を行いました。
当課では、今後も関係機関と連携し、地域営農法人の経営安定・所得向上に向け支援するとともに、研修会などを通して、将来の機械の共同利用などを見据え、法人間の横の繋がりができるよう図っていきます。

2022年3月

講習会の様子

ホウレンソウのべと病対策講習会の開催

小国郷(南小国町、小国町)や産山村は、標高600~1000mに位置する高冷地であり、冷涼な気候を活かし、ホウレンソウの周年栽培を行う産地です。同産地では、近年べと病の発生による収穫量減少が問題となっており、特に産山村における秋期(10~12月)の発生が多く、部会の半数以上の生産者において収量が減少していたことから、2月15日JA阿蘇産山集出荷場においてべと病対策講習会を実施しました。
べと病は、気温が低く(発生適温:8~18℃)多湿な環境下で発生し、春(3~5月)と秋(10~12月始め)に多発する病気です。べと病の胞子は風により拡散され一度病気が発生するとほ場全体に広がりやすいため、べと病の特性に基づく発病防止対策を重点的に説明しました。また、種苗メーカー3社より、他産地のべと病の発生状況やべと病抵抗性品種の紹介などが行われました。生産者からは、講習内容の確認やべと病抵抗性品種の使い方など多くの質問があげられ、普及や種苗メーカーと活発な質疑応答が行われました。
講習会終了後、部会長や企画したJA集出荷場担当職員からは、「べと病の基礎知識について再確認することが出来てよかった」、「産地全体で対策に取り組んでいきたい」との感想をいただきました。今後も産地で問題となっている病気等がある場合は、講習会や現地検討会を行い現場の課題を解消していきたいと思います。

2022年3月

ニューファーマーズセミナーの集合研修とオンライン開催の様子
ニューファーマーズセミナーの集合研修とオンライン開催の様子

新規就農者向けニューファーマーズセミナーの開催

阿蘇地域振興局等主催による新規就農者向け講座「阿蘇地域ニューファーマーズセミナー」を1月14日と2月4日に開催し、阿蘇管内の新規就農者、市町村、農業団体職員らのべ60人が参加しました。
セミナーは1回目が集合開催で、担当普及職員による座学を行い、農業経営、農作業安全、土づくり、スマート農業の講義を行いました。
また、2回目はオンライン開催で、就農約10年になる先輩農家の下城 亮輔 氏(下城きのこ園代表:南小国町)と山本 倫大 氏(山本耕農㈱代表取締役:阿蘇市)に就農から現在までの取組みや経営ポイントについての経験談を講演いただき、続いて、融資機関4団体(日本政策金融公庫、JA阿蘇、肥後銀行、熊本銀行)から制度資金を活用した優良事例等を紹介いただきました。
先輩農家の講演では「1時間の価値を知る」「整理整頓の大事さ」や「100年後も続く経営」「選択と集中」など経営の核となるキーワードが多く出され、参加者からも大変好評でした。また、座学では、土づくりやスマート農業等への質問・関心が高く、融資借入者・検討者から資金繰りや施設投資についての質問を受け、経営改善に対する意識の高まりもみられました。
今回は初のオンライン開催でしたが、反応は概ね良好で、今後はオンラインによる夕方からの勉強会の開催なども検討していきます。

2022年3月

阿蘇地域農業担い手シンポジウムの開催

阿蘇地域認定農業者連絡協議会等(当課事務局)主催による阿蘇地域農業担い手シンポジウムを2月24日にオンラインで開催し、阿蘇管内の認定農業者、新規就農者、市町村、農業団体職員ら36人がWeb上に集いました。
講演では、本県にも農業参入をされた㈲ワールドファーム(茨城県つくば市)の経営企画室長 櫻井勇人 氏が「儲かる農業と担い手育成を実践するワールドファームの農業モデル」と題して、業務用露地野菜の生産と加工販売の6次産業化による超効率的な農業で、全国展開可能な取り組みを紹介されました。
講演後も参加者から「売上目標を立てることは基本だが、それとは別に長期的な目標(輸入野菜のうち50万トンを国産化させる!等)を設定することで、経営の方向性やこだわりが高まり、ファンや同士が増えることに繋がっていると思うので、計画立案の参考にしたい」等の前向きな意見が寄せられました。
また併せて、当課や高原農業研究所、草地畜産研究所、阿蘇家畜保健衛生所の活動実績や研究成果報告を行い、地域農業の将来と個々の経営改善・資質向上を考える良い機会作りとなりました。
今回は初のオンライン開催で、当初から若手中心の参加になることが予想されたため、オンライン会議ソフトの機能を利用して講演等を録画し、事前に募った希望者へ編集したDVDを約50枚配布する予定で、当日参加された方だけでなく、阿蘇農業に関わる多くの方へ経営向上に向けアクションを掛けていきます。

2022年2月

現地指導の様子
出荷会議(オンライン)の様子

~湿地性カラー「ホワイトトーチ」の産地を目指して~出荷会議を開催しました

阿蘇地域では、湿地性カラーの生産導入開始後、熊本地震の影響等から出荷量が伸びない状況が続いておりましたが、新規生産者の出現や阿蘇地域に合った栽培方法の検討・導入が進み、徐々に出荷量は増加しています。一方で、生産面に関する課題として、夏季の遮光管理方法があります。そこで、今回は①「収穫時の開花程度や出荷規格についての意見交換と目慣らし」について、②「阿蘇地域に合った夏季の遮光管理方法の提案」について、管内生産者、JA指導員を参集し7名で会議を行いました。当初は、目慣らしのための切り花を各ほ場から持ち寄る予定でしたが、コロナ禍で対面開催が難しくなったためオンライン開催としました。
①生産者の移り変わりがあるなか、現在生産中の5戸が集まり出荷規格について意見交換を行うのは今回が初めてで、お互いの出荷形態を知る良い機会となりました。また、今後さらに産地として信頼を得るためにも、出荷規格の統一に取り組んでいく必要があるとの認識が高まりました。
②夏季の遮光管理については、展示ほ調査データをもとに阿蘇の気候に合った方法を提案し、その実施に向けて各ほ場に合った方法の意見交換を行いました。今回提案・協議した内容から阿蘇独自の栽培マニュアルを完成させ、それをもとに新規生産者の獲得と安定生産につなげていきます。

2022年2月

経営指導の様子
決算書を基に作成した資料

~持続可能な経営に向けて~地域営農法人経営相談会を開催しました

阿蘇地域では地域営農法人など担い手への農地集積を進めており、平成27年から法人設立が続いています。
当課では、平成30年から地域営農法人の運営に対するフォロー活動の一環として、市町村・JA・農業公社・普及の支援チームで経営相談会を行っており、今年度は7月と12月の2回に分けて14法人を対象に開催しました。
当課経営担当が各法人の総会における決算報告書を基に経営分析、安全性分析を行い、財務諸表で特に注意すべき12項目をグラフ化した資料により経営状況についての助言を行いました。現在の経営状況を過去のデータや当初計画、地域平均と比較することで、法人役員に対して経営や資金に対する意識づけを行いました。また、事前に回答してもらった経営管理チェックシートを基に法人組織の運営状況を確認し、助言を行いました。
助言後の意見交換では、「法人が抱えている不安や興味のあること」及び、「今後の作付動向や設備投資計画」などについて聞き取りを行い、意向を確認しました。
当課では、今後も地域営農法人を地域の核となる担い手として育成するとともに、これから法人化を目指す地域に対する優良事例としていくため、引き続き経営指導や研修会を行うことで、法人の経営安定を支援していきます。

2022年2月

発表の様子
集合写真

阿蘇地方青年農業者会議の開催

12月21日、阿蘇地域振興局において、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策を十分に行ったうえで、阿蘇地方青年農業者会議を開催しました。
今年度は意見発表1題、プロジェクト活動5題の発表が行われました。意見発表では、クラブ員の就農の経緯や農業に対する思いの発表が行われ、プロジェクト活動では、それぞれの経営上の課題解決に向けての検討や農業・食料における課題解決案等の発表がありました。また、発表を行っていないクラブ員や新規加入予定者も含めて自己紹介を行い、親睦を深めました。
審査講評では、発表内容や発表の仕方等についてアドバイスをいただいた他、2月10日に開催される熊本県青年農業者会議で優秀な成績が収められるよう激励もいただきました。
今後も、クラブ員と当課員が一丸となって発表内容をさらに磨き上げていきます。また当課では、クラブ員がやりがいのあるクラブ活動が行えるよう環境づくりを進めていきます。

2022年1月

集合写真
代表理事挨拶

(農)上田尻AGRI設立

11月6日に産山村上田尻地区で農事組合法人「上田尻AGRI」が設立されました。
当地区は産山村北部に位置し、豊富な水源を活用した水稲栽培が行われてきました。しかし、農業者の高齢化や後継者不足等による農地の維持や景観の保全などの問題があり、次世代へ農地をいかにして引き継ぐかが喫緊の課題となっていました。
このような中、上田尻地区では令和元年度から農地集積加速化事業に取組み、8月に事業推進員会、令和2年11月に営農改善組合を設立しました。農地集積の手法や担い手の形態を検討し、地区内の同意を得るための話合い等を35回も行った結果、地区内農地29haを集積し、農業者15名(うち地区外1名)が参加する「(農)上田尻AGRI」が設立されました。
当法人は組合員15名のうち9名が40代以下で構成されており、法人としての地域活動が大いに期待されています。今後は、法人への農地集積・集約を推進し、機械の整理合理化や低コスト技術の取り組み、作業受託面積の拡大などを行い、経営の安定化を目指します。
当課では、話合い活動への参加のほか、次世代へ農地を受け継げるよう関係機関と連携し法人経営の安定化を図るため、新技術導入や補助事業の活用等の支援を引き続き行っていきます。

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